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観賞用メダカ、生態系に脅威 「第3の外来種」全国で放流を確認

産経ニュース 2024年8月28日 10時11分

人工的に品種改良され、色鮮やかな体色が人気を集める「観賞用メダカ」が、全国の河川などで相次いで発見されている。自宅で世話を楽しむ愛好家が急増する一方、飼育が困難になって野外に放流するケースも多いとみられる。ただ、観賞用メダカは在来種との交雑などで各水域の生態系を脅かす恐れがあり、専門家らは国内外の外来種に続く「第3の外来種」として警戒を強めている。

大津市の琵琶湖南岸で今年4月、背中や腹びれが青白く光る観賞用メダカ1匹が初めて見つかった。本来は琵琶湖に生息するはずがない個体。「10年以上前から野外で観賞用メダカが確認されているが、愛好家の急増とともに目撃例が増加傾向にある」。滋賀県立琵琶湖博物館の川瀬成吾学芸員はそう説明する。

初心者でも自宅で飼育しやすく、新型コロナウイルス禍で在宅が増えたこともあって愛好家が増えている観賞用メダカ。専門店では1匹数百円程度から販売されるが、中には100万円超の値が付く個体もあるなど価格も高騰している。

観賞用メダカは令和2年以降、少なくとも全国13都府県の河川などで相次いで見つかっている。大津市内の別のため池でも昨年7月、青い体色が特徴の「青メダカ」3匹を確認。うち1匹は脊椎が曲がっていたという。

放流の中には、屋外に設けた水槽が大雨であふれ、用水路などに流れ込む〝事故〟もあるというが、川瀬さんは「(ため池に)流れ込む河川はなく、養殖業者や愛好家が販売に適さないなどの理由で放流した可能性が高い。全国的な放流の増加もこうした背景があるのでは」と推察する。

放流によって懸念されるのは生態系への影響だ。観賞用メダカは寿命が1~2年と短く、目立つ体色は自然界で捕食されやすい。一方で繁殖力が高く、他のメダカとの交雑によって将来的に在来種がいなくなってしまう恐れがあるが、海外起源の「特定外来生物」には該当せず、放流を禁じる法令がない。

そこで、日本魚類学会は観賞用メダカについて、海外から持ち込まれる「海外外来魚」、国内の別の水域から持ち込まれた「国内外来魚」に次ぐ「第3の外来魚」と位置づけ。交流サイト(SNS)を通じ、愛好家らに放流を控えるよう呼びかけている。

愛好家や販売業者らも3年前、「改良メダカの放流禁止を考える会」を発足。40超の個人や専門店が参加し、世話ができなくなった観賞用メダカを無料で引き取る活動のほか、放流の悪影響を知らせるチラシを配布して啓発を続ける。

川瀬さんは「観賞用メダカが繁殖し、在来種がいなくなれば複雑な生態系のシステムが維持できなくなり、人間の生活環境にも大きな影響を与える可能性がある」と指摘。「正しい知識と責任を持って飼育し、(同じ)メダカだから大丈夫だろうと安易に放流しないでほしい」と訴えた。(小川恵理子)

外来種

本来生息していなかった地域に、人間の活動に伴い他の場所から移ってきた動植物。日本国内には、ヌートリアやカミツキガメなど2千種以上の外来種が生息しているとされ、元々の生態系に影響を与える懸念がある。金魚やニシキゴイなどを人工的に品種改良した魚類が「第3の外来種(魚)」と呼ばれることもある。

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