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「就職戦線の前哨戦」インターンシップがより重要に 規模拡大する企業相次ぐ

産経ニュース 2024年9月30日 8時0分

本格的な就職活動を前に大学生らが企業で就業体験をする「インターンシップ」。昨年度から、参加学生の情報を、採用選考に使用できるようになり、今年度は規模を拡大して実施する企業も相次ぐ。冬に実施予定のプログラムもあり〝就職戦線の前哨戦〟は今後も熱を帯びそうだ。

就業体験が必須、定義を明確化

インターンシップは、学生が目指す仕事への適性や能力を見極めるため、企業で就業体験をすること。昨年度の実施分から定義が明確化され、就業体験を伴わないものなどはインターンと呼ばなくなった。

実施方法は2種類。一つは、主に大学3、4年生や大学院生が企業の実務などを経験する「汎用(はんよう)的能力・専門活用型インターンシップ」。汎用的能力活用型の期間は5日間以上、専門活用型は2週間以上としている。もう一つは、大学院生がより長期的に専門性の高い職務を体験する「高度専門型インターンシップ」だ。

企業は参加した学生の適性や働きぶりなどインターンで得た情報を、後に始まる採用選考に使うことができる。

倍率30倍以上になるコースも

富士通が今夏に実施したプログラムには約9200人が応募し約700人が参加。倍率は約13倍となった。昨年度は参加者が約530人(倍率9倍)で、夏の時点で上回った。

実施方法は、①同社の代表的な2職種で5日間、業務を疑似体験、②より深掘りした職場体験を5~15日間程度、③実際のビジネスを1~6カ月間経験し、時給も支払う-の3形態。特に③は、冬以降にも開催予定で、今後も募集を拡大していくという。

「社員と一緒に業務を遂行するので仕事内容だけでなく、職場の雰囲気や働き方を学生に伝えられる機会になっている」と、同社人材採用センターのシニアマネージャー、田中雄輝さんは語る。

日立製作所は職務内容を細かく区分して募る「ジョブ型」のインターンを拡充。令和4年度に280だった業務のテーマ数は今年度、約630となる見込みだ。4年度は約600人が参加したが、今年度は約1千人と見積もる。

中には選考倍率が30倍以上となるコースもあるといい、希望してもインターンに参加できない学生は少なくない。しかし、「仕事への理解を深めてもらう機会で、参加が採用選考の必要条件や前提になるわけではない。採用選考では公平に能力や適性の評価を行う」と同社の担当者。実際、今年入社した新卒社員のうち、インターンに参加していたのは約22%にとどまるという。

「5日以上」の参加経験は2割弱

リクルートの研究機関「就職みらい研究所」は今年3月、令和7年卒業予定の大学生(回答675人)らにインターンを含むキャリア形成支援プログラムへの参加経験を聞いた。5日以上のプログラムに「参加したことがある」と回答した人は2割にも満たなかった。

参加したくても「事前選考」という壁を越えられないケースもある。実際、5日以上のプログラムに参加した大学生への調査でも、参加先企業のすべてで選考があったとする答えが6割以上を占めた。

「学生の頃から企業への理解を深められれば、ミスマッチが起きにくくなり、就職後も意欲的に業務に取り組める」。こう語るのは、同研究所の栗田貴祥(たかよし)所長だ。しかし「(インターンの)事前選考での落選は珍しくない。その選考に落ちたとしても、興味があるのなら本選考にエントリーしたほうがよい」とも。

またインターン開催には、企業側に大きな負荷がかかる点も指摘。調査で5日以上のプロブラムへの参加が大学生の2割に満たなかったのは、「ルール変更の初年度で、準備が間に合わなかった企業もあったからでは」とも分析した。(竹中文)

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