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茨城・牛久の少年院でワイン用ブドウを収穫 更生と地域おこしのダブル効果期待し、行政などと連携

産経ニュース 2024年9月1日 10時12分

茨城県牛久市にある少年院「茨城農芸学院」(法務省所管)で、在院中の少年らがブドウを収穫した。これらのブドウは日本初の本格的ワイン醸造所「牛久シャトー」で醸造され、来春には店頭に並ぶ。牛久市と牛久シャトー、茨城農芸学院の3者が連携する「牛久ワインプロジェクト」の一環で、在院少年の更生の一助と地元PRの〝ダブル効果〟に関係者は期待を寄せている。

2種のブドウを栽培

「ここを切るといいですよ」「今年の夏は暑かったけど、いいブドウができた」。15人の在院少年は、牛久市の沼田和利市長や牛久シャトーの関係者にこうした言葉をかけつつ、ていねいに収穫していた。

茨城農芸学院に入所しているのは、知的能力に制約がある15歳から20歳未満の少年約80人。広大な敷地にはビニールハウス8棟があり、ブドウは2種の約350本を栽培している。

この日は、メルロー種のブドウ約1500キロを収穫した。今後収穫が見込まれるブラッククイーン種とともに「牛久葡萄酒(ぶどうしゅ)Merlot(メルロー)2024」として牛久シャトーで醸造され、来年春には1本(750ミリリットル)4000円(税込み)でシャトーの店頭やネットを通じて販売される予定だ。現在は昨年収穫分が販売されている。

シャトー再開が契機

プロジェクトのきっかけは、牛久シャトーと出資者である市のトップのアイデアだった。牛久シャトーは明治36(1903)年に日本初の本格的なワイン醸造所として開設。財政難などで一時は閉鎖されたが、市などの支援で令和元年に再スタートした。

だが、ボトルに「牛久」の看板を掲げるには市内で取れたブドウを85%以上使うことが条件で、地元の生産量は、とても足りなかった。市が茨城農芸学院にブドウづくりを打診したところ、農業を通じた地域貢献を更生に役立てたいと考えていた学院が快諾し、協力体制が組まれた。

生徒らにもやりがい

栽培の始まった一昨年春からは牛久シャトーの技術者らの指導を受けたが、現在は基本的に茨城農芸学院関係者だけでブドウづくりを行っている。

沼田市長は「栽培を今後の人生に生かしてほしい。市の特産品を自分たちが作っているという自信にもなる」と顔をほころばせる。

ブドウを収穫した19歳の少年は「(ブドウ栽培は)子育てと同じ。愛を持って育てたブドウがワインとなって多くの人に届くと思うとやりがいを感じる」。17歳の少年は「ブドウを栽培して将来農業をしたいと思った。いつかは自分たちが作ったワインを家族や友人と飲みたい」と笑顔を見せた。

指導にあたる中橋文弥・職業指導主任(48)は「ブドウ3房でボトル1本のワインができると説明すると実感しやすい。生徒が将来このワインを買えるだけの経済力と、自らを理解してくれる家族や仲間を作ってほしい」との思いを語った。(篠崎理)

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