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空き瓶回収で見つけた「魔法の紙」 ポスターみたいな地図1枚からお金が稼げるとは… 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<14> 

産経ニュース 2024年11月15日 10時0分

《訪問販売の会社に就職して新人賞を獲得。社会人生活は順調なスタートだったが、営業所長と勤務についての意見が合わず、会社を辞めることに》

アルバイトはクビ、正社員でも上司に叱られて退社です。雇われて仕事をするのは無理だな、と思いました。で、自分で稼ぐにはどうすればいいか、ってなりますよね。いろいろ考えながら歩いていたとき、いいものが目に飛び込んできたんです。それは酒屋さんのシャッターの前に山積みになっていたビールとかコーラなどの空き瓶。それを見て、「あっ! これはチャンスだ」って思ったの。

居酒屋さんなど飲食店にお願いして空き瓶を回収し、酒屋さんに持っていけば買い取ってくれるんだ、と。当時は空き瓶1本10円、1ケースで240円です。で、1日10ケースを目標に空き瓶を回収し、酒屋さんに持ち込む日々が始まりました。1日2400円あれば、なんとか生活はできますからね。

僕は池袋に近い要町に住んでいたので、近所に繁華街がいくつもあって空き瓶の回収は問題ありません。そこここの路上にケースごと置いてありましたから。当時はスーパーがまだめずらしいころで、買い取ってくれる酒屋さんも200メートルごとくらいにあったんです。

で、夜9時ぐらいから繁華街を自転車でまわって、空き瓶の回収を始めました。2、3ケースを回収してアパートに戻り、ベランダに置き、そしてまた自転車で夜の繁華街へ。10ケースが目標ですから一晩で3、4往復しました。夜が忙しいんです。それを翌日、酒屋さんに買い取ってもらっていたのです。

《買い取り先の酒屋さんで驚愕(きょうがく)のできごとを目撃する》

空き瓶の回収を始めて2週間もしたころでしょうか。顔なじみになった酒屋さんで、びっくりする光景に出くわしたんです。その酒屋さんを訪れた男の人がポスターみたいな紙切れを1枚、ご主人に渡して「集金です。8000円になります」って言った。で、ご主人は8000円をその男性に支払うわけです。「ええっ、これは何なんだっ?!」ってなった。こっちは重たい思いをして空き瓶10ケースを運んで2400円なのに、なんで紙1枚が8000円なの、って。

僕は好奇心の塊ですから、疑問に思ったことはすぐに聞く。で、ご主人に「何で紙1枚に8000円も払うんですか?」って尋ねたんです。そうしたらご主人は、「ああ、あれね。広告を入れたからだよ」と。これでは何だか、よく分かりません。で、「広告って何ですか?」って続けて聞いてみました。するとご主人は、そのポスターみたいな紙を僕に見せてくれた。

そこにはその酒屋さんの周辺の詳細な地図が描かれていて、一軒一軒の家やお店の名前などが書かれている。で、その地図をぐるりと囲むように、不動産屋さんや飲食店、信用金庫、病院、文房具屋さん、酒屋さんなどの住所や電話番号、営業時間やお店の宣伝などが、升目みたいに載っているわけです。ご主人は地図まわりのその升目を指さし、「これが広告だよ。これにお金が発生するんだよ」って教えてくれたんです。

《空き瓶回収よりもはるかにお金になる「魔法の紙」との遭遇。以降、町内会の地図とそのまわりの広告を取る仕事にかじを切ることにした》

町内会の地図のまわりの升目に広告を載せるだけで、ひとつ8000円になるのか。数えてみれば、地図まわりの広告の升目は20もあった。この紙1枚で16万円か…。うなりましたね。そしてその瞬間、「これは空き瓶の回収をしている場合じゃないぞ」ってなったんです。すぐ本屋さんに行き、都内の町内会の地図を購入しました。(聞き手 大野正利)

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