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関西の寺社にキャッシュレスの波、賽銭箱の横にコードやタグ 導入判断分かれる

産経ニュース 2025年1月21日 7時0分

飲食店やスーパーなどで当たり前となったキャッシュレス決済の波が、関西の神社や寺院にも押し寄せている。スマートフォン決済大手のPayPay(ペイペイ)は、初詣シーズンを控えた昨年12月、賽銭にペイペイの送金機能を使えるようにした。キャッシュレスサービスの導入は広がりつつあり、人手不足の解消や盗難リスクの減少が期待される一方、神様や仏様の前で現金を納めるという伝統的な形を大事にしたいという寺社も。それぞれの事情に迫った。

伝統や文化に興味を

1400年以上前の西暦593年に建立され、日本仏法最初の官寺として知られる大阪市天王寺区の四天王寺は昨年12月25日に、ペイペイ決済を導入した。境内の約40カ所に置かれた計約70の賽銭箱の脇に、賽銭を納めるためのQRコードを備える。スマートフォンでコードを読み取って金額を入力すると、「お気持ちを送る」と記した画面が表示され、送金ボタンに触れると完了する。いたって簡単だ。

キャッシュレス決済に慣れた若者世代に、寺の伝統や文化に親しんでもらうことも狙いの一つ。導入に際し内部での反対意見はなかったといい、四天王寺の担当者は「便利にお参りいただければ」と強調する。

祈禱などに拡大も

聖徳太子が創建し、日本最初の観音霊場とされる兵庫県宝塚市の中山寺でも昨年11月、賽銭にキャッシュレス決済を試験導入した。QRコードを読み取る方法ではなく、クレジットカード情報を登録したスマホを境内の「NFCタグ」にかざし、ウェブのブラウザー上から寄付する。

中山寺の担当者は「現金を持ち歩くことに不安を抱く高齢者や、祈禱(きとう)を申し込む際に現金の持ち合わせがなくて困るケースが増えている」と説明。4月からは祈禱やお守りなどにも拡大するという。

ただ、参拝者からは「便利になった」との意見だけでなく「違和感を覚える」といった声も寄せられている。寺では賛否それぞれの意見に耳を傾け、取り扱いを慎重に進めている。

現金投入の意味とは

賽銭のキャッシュレス決済は、寺社側にとってのメリットも大きい。賽銭箱前での混雑緩和や盗難の防止につながるほか、現金回収の手間が省けるものの、導入を控える寺社も少なくない。

交通安全祈願などで知られる大阪府寝屋川市の成田山不動尊。キャッシュレス決済に関する問い合わせが増えてはいるが、現在のところ導入予定はない。

同不動尊の漆山照隆企画部長は「賽銭箱に現金を投入するという行為自体にはそもそも、穢(けが)れを払ったり身を清めたりする意味がある」と説明。「願いをかなえたいという思いを直接神仏に届けることができる、と考える参拝客は多いはずだ」という。

ただ、同不動尊でも賽銭の盗難被害への懸念があったり、現金を持たずに参拝に訪れる人がいたりすることは事実。リスクや利便性などを総合的に考慮すると、キャッシュレス決済の導入を頭から否定するつもりはない。

漆山氏は「もし導入するならば、お守りなどを扱う授与所から始めるのがいいだろう」と話している。(北村博子)

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