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昨年から3度の手術で弱気に ノルマンディー上陸作戦の80年式典取材を断念 話の肖像画 報道カメラマン・宮嶋茂樹<29>

産経ニュース 2024年7月30日 10時0分

《健康には自信があったが、昨年から入院や手術を相次いで経験。不安な日々を過ごしたこともあった》

昨年10月、兵庫県で講演などの仕事が2回あり、明石市の実家に数日間滞在しました。妻も一緒でした。このとき突然、高熱が出たんです。ちょっと無理をしていた時期で、講演後に酒を飲んだ翌朝でした。不思議だったのは体温が39度もあるのに、せきや喉の痛みなど風邪の症状がないこと。近所の病院で解熱剤を処方してもらっても全然効きません。高熱は4~5日続きました。

さすがに不安になって、医者になった高校の同級生に相談すると「すぐに精密検査を受けろ」と。明石市の大きな病院で超音波(エコー)検査をすると「肝膿瘍(かんのうよう)」の診断でした。肝臓に膿(うみ)がたまる病気で、肋骨(ろっこつ)の裏に膿の塊がありました。手術では取れない場所だったため、薬で治療することになり、緊急入院になりました。

心の準備ができていなかったのでショックでした。大きな病気をしたことは、それまで一度もありません。生まれて初めての経験です。「家族を呼んでほしい」と告げられたときは「大病の告知か?」と真っ青になりました。単に病状や入院に関する説明を受けるためでしたが…。妻を交えて話を聞きましたが、肝臓に膿があるというだけでゾッとしました。

点滴治療で最初の2日間は絶食。3日目から重湯が出ましたが、げっそり痩せました。入院していた10日間で5キロくらい。通院も入れると治るまで1カ月くらいかかりました。かなり弱気になって、入院中は空腹に苦しみながらも、いろいろ考えちゃいましたね。このときの検査で胆石も見つかりました。肝膿瘍の原因になった可能性もあるとのことでした。

《今年のゴールデンウイーク明けに手術を受けた。その後の取材予定を考慮して時期を選んだはずだったが…》

胆石の治療で今年5月、胆囊(たんのう)摘出手術を東京で受けました。全身麻酔で腹腔(ふくくう)鏡を使い、胆石ごと胆囊を取る手術です。へそやおなかに穴を開けて行いました。7日に手術をして、10日朝には退院する予定でしたが、痛みが治まりませんでした。医師に相談しても「こんなもんです」とあっさりしたもの。再度行ったエコー検査や採血の結果も「どうみても正常値です」と言われました。

「それでも痛い、熱も出てるんです」と必死に訴えましたが「そういうものです」と医師に諭され、結局半日だけ予定を延ばして退院しました。しかし、退院後も朝には熱が出て、へその痛みも治りません。不安な日々が続きました。

《体調を考えた末、以前から計画していた海外取材は中止することに》

今年の6月は、第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦から80年の節目で、式典が開かれるフランスで取材を予定していました。その後は、ウクライナに回ることにしていました。でも、回復まで長引き、次第に弱気になりました。「向こうで痛くなったらどうしよう」とか、悪いことばかり考えてしまいます。悩んだ挙げ句、全てキャンセルしました。やる気満々だっただけに残念です。あの程度の痛みだったら、10年前なら間違いなく出かけていたはずです。

実は、今年1月に白内障の手術もしていて、昨年秋から入院が3回になりました。昨年5月には腰椎の圧迫骨折も見つかっています。頭に重い物が当たって腰に電気が走るような痛みが出て、検査をして分かったんです。以前にも腰痛はありましたが、重い機材を持ち続けたせいもあり、ちょっとしたショックが圧迫骨折につながったようです。似たような症状のカメラマンは多いですね。

それ以来、慢性的な痛みがあり、7月には胆管炎でまた入院と手術になり、弱気なままです。ただ、ウクライナの取材はあくまでも延期。必ず行きたいと思います。(聞き手 芹沢伸生)

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