岩手県西和賀町にある湯田ダムのダム湖「錦秋湖」で水位が下がることによって10年に1度だけ全体が姿を現す鉄道遺構の見学会が9日、開かれ、県内外からダムや鉄道遺構のファンら40人が駆けつけた。
発電と農業用水の共同取水口が10年に1度のメンテナンス工事中で、錦秋湖の水位が通常の最低水位からさらに2・5メートル下がり、遺構が姿を現した。これに合わせる形で湯田ダムの竣工(しゅんこう)60周年と錦秋湖沿いを走るJR北上線(北上-横手)の全線開通100周年を記念し、北上川ダム統合管理事務所湯田ダム管理支所(佐々木大支所長)が見学会を企画した。
水没遺構をボートから間近で観察し、旧横黒線(現JR北上線)のロックシェッド内に足を踏み入れられる見学会は大人気で、募集開始から半日で定員の40人に達した。
「歴史の重さ感じる」
特に参加者の注目を集めたのはロックシェッド。8日午後9時にマイカーで埼玉県川口市の自宅を出発してきたという会社員の山田英明さん(55)は20年来のダムファンで、「ロックシェッドは歴史の重さを感じた。感動した」と興奮気味で話した。
横浜市の会社員でダムファンの吉田実さん(56)は「錦秋湖は以前のダムの跡や鉄道、駅の遺構など生活の基盤がはっきり残っている。全国的にも珍しく、しっかり残っていて素晴らしい体験だった」と盛んにカメラのシャッターを切っていた。
地元の西和賀町出身で矢巾町の会社員、藤巻和世さん(60)は、娘でダムファンという千葉県習志野市の会社員、瑠さん(28)が合流した。和世さんは「遺構を見られて本当にラッキーでした」、瑠さんは「神秘的でした」とともに感激した様子だった。(石田征広)