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「クレヨンしんちゃん」効果で埼玉・春日部への訪日客増 関連グッズ少なく経済効果に課題 深層リポート

産経ニュース 2024年9月7日 8時0分

韓国、中国を中心に埼玉県春日部市を訪れる外国人観光客が増えている。人気アニメ「クレヨンしんちゃん」の舞台になっている同市を一目見ておきたいと駅周辺の作品にちなんだ場所や撮影スポットをめぐっているという。ただ、その後は寄り道をせずに宿泊先の都内に戻るなど、市内での買い物や食事といった消費行動には至っていない。

「漫画の舞台の春日部に来たかったので、一人で来ました」

中国・北京市に住む会社員、ワン・ユーさん(30)は覚えた日本語でこう話した。目当ては、英、中、韓の言語に対応した舞台地マップやスタンプ巡りの台紙が置いてある観光案内所「ぷらっとかすかべ」や「しんちゃん」が描かれたスタンプが設置してある市郷土資料館、首都圏外郭放水路地底探検ミュージアム「龍Q館」など。こうした場所は、ワンさん以外の多くの外国人観光客も訪れる人気スポットとなっている。

ワンさんは「しんちゃんは絵の描き方がかわいい。家族の温かいストーリーがいい」と話す。

春日部市がモニュメント

春日部市は、さらに外国人観光客を増やそうと、アニメの版元である双葉社に協力を仰ぎ、市内の主要公共施設に登場キャラクターのモニュメントを設置。市役所のまちなかひろばには8月、主人公の野原しんのすけと妹のひまわりのモニュメントを完成させた。

訪れる外国人観光客は、中国を筆頭に東アジア圏の若者だ。ぷらっとかすかべの外国人来館者数は令和5年度が8061人で4年度(3554人)に比べ2倍以上、新型コロナウイルス禍で観光客が激減した2、3年度を除いた令和元年度との比較でも4・5倍も増えている。

ぷらっとかすかべを運営する春日部市観光協会の折原章哲事務局長は「外国人訪問者の多くが20、30代の男女ペアか男女グループ。ほとんどがクレヨンしんちゃんに関するスポットを訪ねてくる」と指摘する。

中国・西安市から来た男性会社員(32)は「30代は中国版しんちゃんを見ている世代なのでとても親しまれている」と人気の理由を明かす。

自分たちで考えて

外国人観光客に人気の「クレヨンしんちゃん」だが、東武線春日部駅西口の駅前には「しんちゃん」に関するグッズを売っている店は少ない。

駅沿いを大宮方面に進むと、商品化の許可を得て「しんちゃん」のイラストがプリントされたキャラクターTシャツなどを販売している衣料品店「ルーディーズ」(片柳聡代表)を発見できた程度。温泉観光地でみられるような、地元の人気キャラクターを刻印して焼きあげた菓子を売っているような店は皆無だ。

商品化の窓口となる双葉社は「『クレヨンしんちゃん』が、春日部在住の方々や地元企業に愛され、世界中のファンの方々が春日部に訪れることでにぎわうのであれば大変うれしい」とコメントしており、ライセンス取得が困難な理由は見当たらない。

「しんちゃん人気」の春日部市への経済波及について、岩谷一弘市長(58)は「(何をやれば経済効果があるか)自分たちで考えてもらってやってもらうのが長続きし成功するやり方だと思う」と強調。市の商工会議所や商店会などが旗振り役となりアイデアを出していくことを期待している。

クレヨンしんちゃん 幼稚園児「野原しんのすけ」が主人公で、家族との日常を描いたアニメ。いたずら好きな憎めないキャラクターがファンに人気だ。住んでいる場所は春日部の架空の住所になっている。春日部市役所にはモニュメント、市郷土資料館などの公共施設にはキャラクターのスタンプ台帳があり、外国人観光客に人気のスポットとなっている。

~記者の独り言~ 地方に旅行に行って人に会ったとき、住んでいるのが春日部だというと「あのしんちゃんの…」と返ってくる。その人気を地元が傍観しているのはもったいない。埼玉県内では小鹿野町の第三セクターの会社が8月、町公式ご当地キャラクター「おがニャッピー」の顔をかたどった米粉クッキーを開発販売した。春日部でも使用ライセンスを得て「しんちゃんパフェ」のようなものができれば観光客も喜ぶかもしれない。(昌林龍一)

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