京都ゆかりの歌手、加藤登紀子さん(80)のライフワークの一つで、年末恒例の「ほろ酔いコンサート」が12月1日、京都劇場(京都市下京区)で行われる。来年はデビュー60周年の節目。「今年のほろ酔いは60周年のキックオフ。めちゃくちゃ気合の入ったコンサートにしたい」と意気込む。
コンサートでは、「百万本のバラ」や「ひとり寝の子守唄」「知床旅情」などファンお待ちかねの定番曲は外せないという。「曲は古いけど、歌う私とともに生きているし、歌う意味も大きくなっている」
小学から中学1年まで上賀茂神社(同市北区)の近くに住み、兄の経営するロシア・ウクライナ料理店「レストランキエフ」(同市東山区)がある京都は特別な町という。
60年の歌手人生を振り返り、「この60年は、昭和の王者のような人たちとの素晴らしい出会いに尽きる」と、しみじみ語る。今年は俳優の高倉健さんが亡くなって10年。映画「居酒屋兆治」(昭和58年)では高倉さんの女房役で共演し、主題歌「時代おくれの酒場」を作って高倉さんが歌った。
没後15年となる森繁久彌さんとの出会いが、森繁さん作詞作曲の知床旅情へと導いた。曲を提供し、昭和62年に石原裕次郎さんが歌った「わが人生に悔いなし」は、生前最後のシングル曲となった。自らの60年に大きな影響を与えた人たちとの「出会いと思い出を歌に託したい」と話す。
さらに今年最も気にかかったのは、元日の地震に加え9月の豪雨と、度重なる甚大な自然災害に見舞われた石川県の能登半島のことだ。七尾市には今も親戚が住む。
平成2年にコンサートを行った能登半島の内浦(現能登町)を4月中旬、再訪した。内浦には津波もあったようで会場となった運動公園などは閉鎖されていたが、当時のファンらと感動の再会を果たした。今はまだその時期ではないが、「いつか必ず能登半島でコンサートを開きたい」という。
ほろ酔いコンサートは京都では43回目。最初の頃は客席に一升瓶を持ち込むなどして宴会のように盛り上がったという。現在は振る舞い酒は、土産として持ち帰ってもらう。
午後4時開演。残席は当日券千円(立見席)のみ。問い合わせはアクティブケイ(075・255・6586)。(田中幸美)