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幻の「曳き鉾」…悲願の復活へ 祇園祭の綾傘鉾 幕末の蛤御門の変で焼失

産経ニュース 2024年7月3日 14時4分

祇園祭前祭(さきまつり)の山鉾(やまほこ)巡行(17日)に参加する綾傘鉾が、江戸後期の約30年間だけ巡行し元治元(1864)年の蛤御門の変の大火で焼失した「曳(ひ)き鉾」の復活を検討していることが3日、分かった。綾傘鉾は昭和54年、曳き鉾がない「徒歩囃子」の形で巡行への参加を再開。別の山鉾から古い車輪を譲り受けるめどがついたことや、今年が45年の節目を迎えたことなどから曳き鉾の復活を本格化させる。

綾傘鉾保存会(京都市下京区)が明らかにした。綾傘鉾は応仁期以前から、台車に乗った大きな傘とともに移動し、その周りで赤熊(しゃぐま)のかぶり面を付けて囃子に合わせて踊る「棒振り囃子」が特徴だ。現在の綾傘鉾はこの形態で巡行に参加している。

綾傘鉾保存会が復活を模索しているのが、江戸後期の約30年間だけ巡行していた曳き鉾だ。当時、ある山鉾から部材を譲り受けて曳き鉾を新造し、天保5(1834)年から巡行に参加していたとの記録が残っている。

しかし元治元年の蛤御門の変に伴う大火で鉾の大部分が焼失。明治初期の数年間、現在と同じ徒歩囃子の形で巡行していたが途絶え、昭和54年に約100年ぶりに復興した歴史がある。

今年、車輪を新調する別の山鉾から古い車輪の提供を受けられるめどがつき、綾傘鉾保存会は曳き鉾復活に向けた環境が整ったと判断した。資金集めや技術者集団の確保が当面の課題だ。

保存会の寺田進理事長(75)は「ありがたく車輪を頂戴し、若い世代が中心になって(曳き鉾を)復活させてほしい。町内は機運が高まっている」と話す。保存会理事で佛教大歴史学部の八木透教授(69)は「曳き鉾(の復活)は綾傘鉾の悲願」と思いをはせた。

保存会では宵山期間中(14~16日)、江戸時代に焼失した曳き鉾の60分の1の大きさの模型を保存会近くの神社で展示する。

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