皇室の菩提(ぼだい)寺として知られ「御寺(みてら)」とも呼ばれる泉涌寺(せんにゅうじ)(京都市東山区)に、箔工芸作家の裕人礫翔(ひろと・らくしょう)さん(62)が、同寺舎利殿の天井に描かれた「蟠龍(ばんりゅう)図」(狩野山雪筆)を金銀箔を駆使して高精細に複製した作品を奉納した。デジタル技術を活用し、鮮やかで力強い龍を再現した。
泉涌寺の舎利殿には肢体を大きくくねらせながら飛翔(ひしょう)する龍が天井いっぱいに描かれている。裕人さんはこの図を見て、「素晴らしさに感動し、インスピレーションを感じた」。自ら複製を申し出て、約1年かけて制作。辰年の今年に奉納した。「山雪を忠実に復元しながら自分のテイストを注入した」と明かす。
越前和紙に金銀箔を1枚ずつ丁寧に重ねて貼っていき、デジタルデータ化した画像をプリントして制作した。縦45センチ、横180センチ。青みがかった黒や赤のバックに金と銀で彩られた龍が力強く描かれた。
泉涌寺の上村貞郎長老(86)は「力のこもった素晴らしい作品をいただいた。大切に保存して活用したい」と話した。
作品は京都古文化保存協会主催の秋の京都非公開文化財特別公開の一環として、12月1日まで公開される。(田中幸美)