国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関は、日本酒や本格焼酎、泡盛などの「伝統的酒造り」を無形文化遺産へ登録するよう勧告した。文化庁が5日発表した。無形文化遺産に登録されることがほぼ確実となったことを受け、酒造関係者からは歓迎の声が上がった。
中世の清酒造りを再現した「菩提酛(ぼだいもと)造り」に取り組んでいる奈良市菩提山町の正曆(しょうりゃく)寺。大原弘信(こうしん)住職(71)は「日本の風土や風習に根付いてきた酒造り文化が評価され、とても意義深い」と喜んだ。
菩提酛造りは室町時代に正暦寺で始まった酒造法で、日本の酒造技術の原形とされる。製法は長く途絶えていたが、平成10年に正暦寺境内と菩提山の岩清水から酵母菌と乳酸菌が見つかり、蔵元有志らが製造法の再現に成功。以来、有志らが毎年1月、同寺で菩提酛の仕込みを行っている。大原住職は「失敗を重ねつつ、より良い酒造りを目指してきた過去の人たちの思いを継承したい」と決意を新たにした。
「杜氏(とうじ)さんをはじめ蔵元にとっても大変うれしいこと」。天文19(1550)年創業の老舗蔵元「小西酒造」(兵庫県伊丹市)15代当主、小西新右衛門社長はこう喜び、「今後は技術の伝承のみならず、文化的な側面も次世代に継承するだけでなく発展させていきたいと思います」とコメントを寄せた。
兵庫県姫路市の酒造会社「田中酒造場」の田中康博社長(72)は、遺産登録では麹に着目しているとし、「麴を使った酒造りに触れている古代の地誌『播磨国風土記』の記述が世界に認められることになり、播州地方の酒造りにとって重要だ」と意義を指摘。同市の酒造会社「本田商店」の本田真一郎会長(73)も「世界が認めてくれるのは何よりの力になりありがたい」と歓迎し、「遺産登録の効果で輸出比率を現在の8%程度から伸ばせたらうれしい」と期待する。