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「もの忘れ」が不安でMRIまで撮ったものの、よく考えれば何の支障もないわけで… 家族がいてもいなくても 久田恵(813)

産経ニュース 2024年9月10日 9時0分

「もの忘れ不安症候群」とでも言えばいいのか…。最近の私は、「もの忘れ」どころか、思考力までも減退している気がして、なにかと不安に陥る。

おまけに鬱陶(うっとう)しい天気が続き、気分も落ち込みがち。そんな折に、かかりつけのお医者さんの検診があったので、ついあれこれ不安を口にしたら、簡単な記憶力チェックをしてくれた。

4つの数字を覚えた後、時間をおいて、覚えたはずのその数字を問われたり、簡単な引き算をいきなり聞かれたり…。チェックを受けた結果、お医者さんが言った。「ま、年相応ってところかなあ。どこで調べても、あなたは、きっと今と同じ質問をされるだけだしなあ」と。

そのとき、急に思い出した。私は以前、健康診断のオプション検査として、MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の状態を調べてもらっていたはず。そのことを告げると、「じゃあ、今回もMRIをやろうか」ということに。

ヘッドホンをして、あおむけに寝て、頭の部分をトンネルのような装置の一部に突っ込んで、撮影する。

ちょっと怖い。緊張する。しかも、脳に響く強い音の刺激が加えられる。昔のやり方とは、全然ちがう。びっくりして、「やめてー」と叫びそうになったけれど、なんとかこらえた。

検査結果は「依頼のあったかかりつけ医に郵送されます」と言われ、家に戻ってきたけれど、このような検査をしたことがよかったのか、悪かったのか…。

道々、歩きながら、思った。「もの忘れ」ごときに、不安になったりしたけれど、なにかそれで、私は困っているのかなあ、と。よく考えれば、別になんの支障もないわけで…。

ほんと、なにやってんだろう、ワタシ…、と思い、吐息がこぼれた。

(ノンフィクション作家 久田恵)

ひさだ・めぐみ 昭和22年、北海道室蘭市生まれ。平成2年、『フィリッピーナを愛した男たち』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。介護、子育てなど経験に根ざしたルポに定評がある。著書に『ここが終の住処かもね』『主婦悦子さんの予期せぬ日々』など。

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