東京都北区は、区内に住み数々の名作を生み出した文豪を顕彰する「芥川龍之介記念館(仮称)」を、令和8年度、旧居跡地に開館する予定だ。「我鬼窟(がきくつ)」と名付けられた書斎も再現し、調度品などを触れるようにする予定で、その整備に現在第3弾が進行中のクラウドファンディング(CF)を活用している。
若い芸術家が田端に集う
区立の田端文士村記念館などによると、明治20年に上野に東京美術学校(現・東京芸術大)が開校されると、次第に若い芸術家たちが田端に暮らすようになり、テニスを介した社交場などもある「芸術家村」になった。芥川龍之介は、東京帝国大在学中の大正3年から田端に住んだ。龍之介が転入した数年後には詩人・小説家の室生犀星も住み始め、この2人が競うように作品を発表。萩原朔太郎、菊池寛、堀辰雄らも次々に集まり、大正期から昭和初期にかけて「文士村」としての一面を持つようになった。
都内には、文京区に森鴎外、新宿区に夏目漱石や林芙美子、台東区に樋口一葉など文豪の名を関する記念館がいくつかある。北区によると、龍之介を単独で顕彰する記念館は都内、国内で初になるという。
敷地は、龍之介が昭和2年に35歳で早世するまで居住した土地(田端1)の一部を区が購入。田端文士村記念館(田端6)にも龍之介の関連資料などはあるが、芥川龍之介記念館では、我鬼窟(のちに澄江堂と改名)と名付けた書斎を、筆記具や文机、蔵書なども現存する資料をもとに忠実に再現。区は、龍之介が生きた時代やその創作を支えた雰囲気を「体感」できる施設を目指すとしている。調度品などの精密な複製品は触れるようにする予定だ。入場料については未定。
CFで558万円超集まる
CFでは15日現在で累計193件、558万円余りの寄付が集まった。来年1月7日までの第3弾では、新規返礼品として、龍之介愛用のネクタイをモチーフにした一筆箋とゆかりの品がデザインされた手ぬぐいのセットや芥川賞作家、平野啓一郎氏の講演会「芥川龍之介の眼差し」(来年3月予定)招待が追加された。5万円以上の寄付者には館内に銘板も設置される予定だ。なお、ふるさと納税を利用したCFのため、北区内在住の人には返礼品は送らない。