Infoseek 楽天

今の教育は間違っている 僕には「仕事」しかない 酒もたばこもギャンブルも遊びもしない 話の肖像画 ジャーナリスト・田原総一朗<2>

産経ニュース 2024年10月2日 10時0分

《インタビューをしていると、ときどき逆質問が飛んでくる。「アナタはどう生きるべきか、いつ決めたの?」。なるほど、そう来たか…》

僕はね、「教育」というのは、子供たちが「一生かけてやりたい仕事を見つけさせる」ことだと思っている。何がやりたいのか? 好きなことをどうやって見つけるのか? それを子供たちに考えさせ、答えを出すように導くのが、教育の重要な使命じゃないですか。一回きりの人生なんですよ。「好きなこと」「やりたいこと」をしなくて、どうしますか。

ところが、大学生を対象にしたある調査結果を聞いて、僕はびっくりした。学生が希望する「就職したい企業」の1番は、倒産しない。2番目は、給料がいい。3番目は、できれば、残業がない…。つまり、「○○をやりたいから」という答えがまったくない。これは、やっぱり今の教育が間違っているからなんですよ。

《「原体験」になった出来事がある。高校(滋賀県立彦根東高校)に入ったとたん、勉強が難しくなり、不登校になりかけた。悩んだ田原さんは教師に問う。「勉強は何のためにしなくちゃいけないんですか?」》

何人かの先生は、「そりゃあ、受験勉強してイイ大学に入るためだ」と…。「じゃ何のためにイイ大学に?」と重ねて問うと、「イイ会社に就職するためだろう」って。

ただし、3人目か4人目の先生が僕と真剣に向き合って相談に乗ってくれた。「生きるということはどういうことか考えろ」「一生かけてやりたいことを見つけなさい」。その話を聞いて、やがて僕はジャーナリストの道を見つける。ありがたい「教え」でしたね。

《ジャーナリストとして歩んできた日々は60年以上》

僕には「仕事」しかない。酒も、たばこも、ギャンブルも、遊びもしない。とにかく、仕事が面白いから、趣味など、他のことをやっているヒマなんてないんですよ。

ストレスですか? 「好きなこと=仕事」だから、まったく感じないし、面白いことをやっていると、疲れも感じない。テレビ番組の出演や、取材で人と会ったりしている以外のときも、原稿を書いたり、資料を読んだりしているので、(仕事に関することが)「1日何もない」という日はないけれど、忙しいとも思いませんね。

《とは言っても、それは「田原さんだから」じゃありませんか? フツーは年を取ると、だんだん仕事の機会も減ってくる…と反論すると》

そうじゃないんだよ。「定年後をどう生きるか?」なんていう本をよく見かけるけれど、それを定年後に考えているんじゃ「遅い」って、ことです。

20代、30代の若いときに「一生かけてやる仕事」をじっくり考えて、見極めなくちゃいけません。その考えがなくて、ただ組織(会社)にしがみついてきた人は、定年になって組織から離れたとたん、途方にくれてしまうんです。

《さて、冒頭の田原さんの逆質問である。私は「記者としての生き方」を問われているのだと思った。大先輩に何かもっともらしい答えを返さねばなるまい。還暦過ぎのおじん記者はこううそぶいた。「(記事を書くことで)少しでも日本の社会を良くしたいのです」。田原さんはぐっと私をにらみ…》

いいじゃない。「日本の社会を良くしたい」というのはマスコミの大事な仕事だよ! (聞き手 喜多由浩)

この記事の関連ニュース