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「世のため、後のため」 盲目の国学者「群書類従」編纂 本庄市の塙保己一記念館 埼玉「館」巡り

産経ニュース 2025年1月11日 13時0分

盲目というハンディを負いながら、文献集「群書類従(ぐんしょるいじゅう)」の編纂(へんさん)を手掛けた県出身の国学者、塙保己一(1746年~1821年)。その業績はすべて「世のため、後のため」という言葉を残したことで知られる。

保己一の旧宅(国指定史跡)が残る埼玉県本庄市の記念館を訪ねた。同館にその一部が展示されている群書類従とは、保己一が一生涯をかけ、「散らばっている貴重な書を集め、後の世の国学をする人のよき助けとなるように」と収集した666巻になる大作だ。

保己一は幕府の援助で設立された「和学講談所」で編纂を手掛けた。全国の神社、公家、大名家に所蔵される文献を調査し、系統だった分類・整理を敢行。それまでの書籍といえば書き写しという時代に、版木に彫って印刷し頒布する道を開くという偉業を成し遂げた。

その中には「徒然草」「竹取翁物語」「土佐日記」などよく知られる1277種類もの文献が収められている。

「国重要文化財である版木は1万7200枚以上に達し、記念館でも実物が一部展示されている」と担当者。版木は温故学会の塙保己一史料館(東京都渋谷区)でも保管され、双方を訪ねる人も多いそうだ。

記念館は保己一の資料など約250点を収蔵し、うち約60点を展示。保己一が江戸に出る際に背負ったという「お宝箱」や母親手縫いの巾着、和学講談所の模型などその軌跡を知る上で貴重な展示が並ぶ。

トップライトから透かしレンガ積みの壁面を通し、自然光にほのかに照らされる記念館。落ち着いた雰囲気の中で江戸時代の偉人に思いを馳せることができる。(柳原一哉)

■塙保己一記念館 平成27年、埼玉県本庄市児玉町のアスピアこだま内に新館がオープン。「群書類従」や手縫いの巾着、和学講談所の模型などを展示。年間入館者数は約5200人(令和5年度)。アスピアこだまには児玉総合支所や児玉児童センターも設置されている。

■アクセスガイド 埼玉県本庄市児玉町八幡山368番地。関越自動車道本庄児玉インターチェンジ(IC)から約15分。JR八高線児玉駅下車徒歩約10分。開館時間午前9時~午後4時半。休館日は毎週月曜日(休日の場合はその翌日)、年末年始。入館無料。

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