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「スキマバイト」で働く人が急増中 背景に物価高や人手不足  なっトクマネー

産経ニュース 2024年8月21日 8時0分

ちょっとした空き時間に単発のアルバイトをする「スポットワーク」という働き方が広がっている。別名「スキマバイト」とも呼ばれる。人手不足に悩む企業にとっては勤務シフトの穴埋めとなり、働き手にとっては履歴書や面接が不要なうえ、「1回だけ」「2時間だけ」と小さく始めて働く場も変えられる気軽さがある。

スポットワークとは、1回限りの短時間の仕事。履歴書の提出や面接がなく、働き先が固定されない。始めたい人はまず、単発、短時間のアルバイト求人が集まるアプリをスマートフォン上で利用し、時間と場所の都合が合う仕事を探す。

アプリの利用開始時に、①携帯電話番号によるショートメッセージサービス(SMS)認証②運転免許証やマイナンバーカードなどで本人確認③顔写真④氏名、性別、生年月日、住所、口座番号など5項目程度の個人情報の登録―が必要だ。

都合に合う仕事が見つかれば、応募のボタンを押す。1回ごとに企業と雇用契約を結び、働く。労災保険の適用対象で、給与は当日に振り込まれることも多い。

家事の合間のちょっとした時間でも働けることから、「スキマバイト」と呼ばれる。一方、「ウーバーイーツ」などの配達員もスポットワークに括られる場合があるが、個人事業主として業務委託を受け、企業に雇用されていない場合が多い。

仲介サービス続々

国内でスポットワーク仲介を始めたのは、平成30年の「タイミー」だ。翌31年に「シェアフル」が続くと、その後は令和3年に「LINEスキマニ」、今年春に「メルカリ ハロ」が始動。多数の利用登録者を持つLINEヤフーとメルカリの参入で、さらに市場が拡大した。

スポットワーク協会(東京都千代田区)によると、タイミーなど大手4社のスポットワーカー(登録者)は、元年末の約330万人から約5倍の約1800万人(今年8月1日)に。「平成30年の政府による副業推進や人手不足に加え、物価高なども進んでおり、生活費を賄う目的でスポットワークを選ぶ人も多い」。同協会の後藤一重事務局長は急増の背景をこう語る。

企業にとっては繁閑に応じて雇用が調整できるメリットがある。一方で、経験や適性不足などによる人材のミスマッチも起こりうる。

労働条件の確認を

利便性の高い働き方だが、副業として働く場合、注意点もある。社会保険労務士の篠原宏治さんは、「会社員の場合、本業以外の所得が年間20万円を超えれば、確定申告が必要になる」と指摘する。

また時間管理も課題だ。スポットワークで副業する場合、本業の労働時間と通算して自己管理しなければならない。

労働基準法では、労働時間は原則週40時間(1日8時間)以内と定められている。超過すると賃金を25%以上、上乗せしなければならない。つまり本業で週40時間働き、さらに副業をした場合、後から労働契約を結んだスポットワークの雇用主は、上乗せした賃金を働き手に支払う義務がある。厚生労働省はこうした副業にまつわる労働時間管理についてガイドラインを示しており、働き手は勤務先に自己申告する必要がある。

また、すべてのスポットワーカーに向け、篠原さんが「事前に必ず目を通して」と呼びかけるのが、賃金や休憩時間などに関する条件が記された「労働条件通知書」だ。1回限りの雇用契約でも、交付が義務付けられている。雇用保険の有無などについても記されており、トラブルを防ぐためにも、事前に内容を把握しておこう。(本江希望)

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