《大学卒業後、バンド活動から遠ざかっていた三宅裕司氏だが…》
赤坂や銀座のジャズクラブに行くとドラムをたたかせてくれて、そこにいるメンバーとセッションができるんです。そういうところで遊びで演奏するくらいでした。
NHKの朝の連続テレビ小説「ひまわり」に出演したとき、ディレクターに慶応大のビッグバンド、ライトミュージックソサエティ(慶応ライト)出身の人がいたんです。
《「ひまわり」は平成8年の作品。一人前の弁護士を目指す主人公を松嶋菜々子氏、母親を夏木マリ氏が演じた。三宅氏は主人公の叔父役(父親の弟)で、家族や仲間が集まるレストランのマスター役だった》
(慶応ライト出身の)彼が「打ち上げはライブハウスを借りて、生バンドの演奏で、出演者みんなが1曲ずつ歌うのはどうですか」と提案してきました。
僕も「おおっ、それ面白い。やろうやろう」って。まだ収録をしている最中で、終わりはずっと先なのにね。
彼が慶応ライトの現役メンバーを集めて、わが家の地下にスタジオがあったので、そこでメンバーに来てもらって練習しました。朝ドラの収録より、そっちの方に力が入っちゃって。
打ち上げでは、松嶋さん、夏木さん、亡くなった(妻役の)川島なお美さん、(主人公が勉強する弁護士事務所長の)奥田瑛二さんらがステージに上がりました。主題歌を歌った山下達郎さんも来ました。
《ニッポン放送にも慶応ライト出身の人がいた》
その方はヤングパラダイスのディレクターだったのですが、終了後、ほかの番組をやっているときに「座長、ビッグバンドを一回やりましょうよ」と言ってきました。
バンドには慶応ライト出身のプロとその卵が集まってくれました。どんな名前にしようかって考えて、「ライト・ジョーク・ジャズ・オーケストラ」に決めました。軽い冗談のつもりってことです。
平成19年、「ザ・ラジオパーク」というニッポン放送のイベントが行われた日比谷公園の小音楽堂で演奏しました。
集まったメンバーの中に、今はバンドのコンサートマスターで編曲もやる羽毛田耕士(はけたやすし)君がいて、「『ひまわり』の打ち上げのときのトランペットは僕だったんですよ」と言われて、世間は狭いなあって思いました。
その後も毎年ライブを続け、ついに平成26年には東京・青山のブルーノート東京で初めてライブを行い、昨年まで計8回開きました。去年は「歌怪獣」のニックネームがある島津亜矢さんがゲストに来てくれました。
僕がEX(エックス)テレビという番組(日本テレビ系、平成2~6年)の司会をやっているときに世界一のベーシスト、ロン・カーターさんがゲストで来たんです。
打ち合わせで、僕が「ドラムをやっています」と話したら、「一緒にやってもいいよ」と言ってくれたんです。びっくりして、言っている意味が全然分からなくてね。
番組で「朝日のごとくさわやかに」を2人で演奏しました。彼はそれまで、日本の楽器ができるタレントさんが共演したいと言ってもみんな断ったそうです。だから、そのときのVTRは家宝です。
ブルーノートでライブをやるときに、そのときに撮った写真をこっそり置いておくと、「どこでつながっているんだ」って、みんなびっくりするんです。(聞き手 慶田久幸)