千葉県市川市と三田文学会は7日、晩年を同市で過ごした孤高の文士、永井荷風(1879~1959年)の功績をたたえるために創設する「永井荷風文学賞」の詳細を発表した。選考委員は評論家の安藤礼二氏や劇作家の岡田利規氏などで、多彩なジャンルの中から、荷風賞にふさわしい文学作品を選ぶ。
審査員はほかに、いずれも小説家の金原ひとみ氏、松浦寿輝氏と詩人の蜂飼耳氏の5人。荷風の幅広い功績に倣い、来年5月までに出版された小説、随筆、評論、演劇、詩、翻訳から一つの作品を選ぶ。賞金は100万円。三田文学会の荻野アンナ理事長は同市役所で開いた7日の会見で「(文学界は)昨今ジャンル分けが進み、袋小路に入った印象。多様性に満ちた活気のある文学の在り方を打ち出す」と意義を強調した。
荷風ゆかりの季刊の文芸誌「三田文学」による「三田文学新人賞」を継承する「永井荷風新人賞」も創設する。審査員は三田文学新人賞と変わらず、公募型で、小説と評論が対象となる。
荷風は小説「濹東綺譚」などで知られる。昭和21年市川に移り住み、79歳で亡くなるまで13年間、市内を転々とした。
荷風の孫の永井壮一郎氏は「世の中に出ることを目指す人の手がかりになり、応援できるような賞になれば」と期待を寄せ、田中甲市長は「市の文化度の高さを発信できる」と強調した。(松崎翼)