「カワイイ文化」の発信地、東京・原宿。観光スポットとしても人気の竹下通りに、ひときわ派手なファッションで人目を引く集団が現れた。
「ネオデコラ」と呼ばれる彼女らのファッションスタイルは、1990年代に原宿を中心に流行した「デコラ」の進化系。「装飾的な」を意味するデコラティブ(decorative)が語源で、全身を過剰なほど飾り立てるのが特徴だ。
「デコラー」の社交場
「はーい、進むよー!」
元気な声で集団を先導するのは、自らもネオデコラファッションに身を包んだNICOさん(18)。月に1度、ネオデコラを愛する若者らで原宿を練り歩く「NEOデコラ会」を主催している。
毎回40~50人ほどの参加者が集まるといい、ネオデコラファッションを愛する「デコラー」たちの社交場になっている。「邪魔にならないように一列で!」と、通行人への心配りも忘れない。
「久しぶり!」「それ、めっちゃかわいいじゃん!」
盛んに情報交換をする参加者たち。いくつも重ね付けしたネックレス、前髪を覆いつくすほどのヘアピン、顔に貼り付けるシールや絆創膏など、大量のアクセサリーや小物を必要とするだけに、安くてかわいいアイテムを手に入れるための情報には敏感だ。手作りの装飾品も多い。
仙台市から参加した長田孝太さん(15)は、アイロンビーズで手作りした髪飾りが印象的だ。中学1年のころ、原宿系ファッションを知って夢中になった。初めは隠していたが、「もう吹っ切れた」。「みんなのファッションを生で見るのが大好き。デコラ会は自分らしくいれる貴重な場所」と、晴れやかな表情で歩いていた。
自分らしく全力で楽しむ
NICOさんがデコラと出合ったのは14歳のとき。「これが私の『カワイイ』の正解だと思った」と振り返る。
歌手の安室奈美恵さんに影響を受けた「アムラー」、篠原ともえさんを模倣した「シノラー」とは異なり、デコラーには特定のアイコンがいない。NICOさんは「ストリートカルチャーのデコラは、仲間のファッションから刺激を受け、切磋琢磨(せっさたくま)して発展するもの。だから最終的な答えがなく、自分の『カワイイ』を追求できる」と魅力を語る。
当時はデコラー同士でつながる場所がなかったため、「それなら自分でイベントを開くしかない」と、15歳の時にNEOデコラ会を始めた。SNS(交流サイト)で広まり、今では全国からデコラーが集う。外国人も珍しくない。インターネット空間と現実の両方で楽しめるのは、以前のデコラにはなかったNEO(新しい)要素だ。
「昔のデコラにリスペクトを持ちつつ、どんどん発展させたいし、たくさんの人に知ってもらいたい。純粋にデコラが好きなので」
NICOさんはそう言って、無邪気な笑顔を見せた。好きなファッションを自分らしく、全力で楽しむ精神は、現代の「カワイイ文化」にもしっかりと受け継がれている。
(文・写真 岩崎叶汰)