Infoseek 楽天

アボカド切らずに「食べごろ」判定 野菜の根に特定光で栄養分変化初確認も 秋田県立大

産経ニュース 2024年9月1日 7時0分

アボカドの「おいしい食べごろ」を切らずに判定・予測する技術を秋田県立大の学生らが発明した。皮の反射光と実際の食味や温度をプログラムして、手軽に店頭表示できる。また、野菜の根に特定光を当てると栄養分が変化することも確認。水耕栽培などで活用できる。いずれも生物資源科学部の小川敦史教授(52)=作物生理学=の指導で、特許出願している。

光と実食データで

アボカド判定・予測法を発明したのは、興味あるテーマを1年次から探求できる同大の学生自主研究制度を利用した寺門優さん(20)ら同学部2年「アボカド探検隊」の3人。

「皮が硬いアボカドは食べごろの判断が難しく、私も切ってみて悔しい思いを何度もしたことから着想した」と小川教授。これに3人が興味を示した。

まずアボカドを半分に切って中身の硬さを果実硬度計で測定。それを実際に食べ、実の締まり具合など熟度を10段階に区分した。おいしい食べごろ熟度5。

「すると硬度計の値が同じでも熟度の分布は最大で3から7まで幅があり、硬さだけで熟度は示せないことがわかった」と小川教授。これを実証するため3人は「アボカドを100個以上食べた」という。

そこで、皮のままのアボカドに光センサーを当て、反射する光の波長ごとの比率を分析したうえ、実際の熟度分布との関係を数学処理したところ、熟度を判定できることがわかった。

さらに保存温度ごとの熟度変化を調べ、気温20度なら1日に0・8段階増すことを突き止めた。「熟度3(少し硬め)のアボカドが気温25度なら2日後、15度なら10日後に食べごろになるので、販売時にシール表示できる」と3人。

小川教授は「このデータをプログラミングすればスーパーなどで使っている一般的な果実用の光センサーで、おいしい食べごろを手軽に判定・予測できる」といい、11月に農林水産省が東京で開く「アグリビジネス創出フェア」で実用化提案する。

3人は「実用機器の開発でアボカドの食品ロスにつなげたい」「アボカドの嫌いな人も、おいしい食べごろを食べて好きになってほしい」と話している。

ビタミン、ミネラルが

野菜の根に特定光を当てると栄養成分が変化することを確認したのは生物資源科学専攻の大学院2年、金(こん)俊輔さん(23)。同じく学部1年次の自主研究から始めた。

「土中の根にも光を感じる受容体があるのは知られているが、直接光を当てると地上部の茎や葉を含めどう変化するかは未解明。そこでいろいろな波長の光を根に当てた」と金さん。

光は紫外、赤、青、緑、近赤外と赤外2種の7種。野菜は生育が速く水耕栽培に適したコマツナにした。

栽培槽に特定光を発するLEDと送気ポンプを取り付け、ほかの光が入らないよう遮光する。「最初は市販の水槽を段ボールで囲った。3年がかりで改良を重ね、アクリル製の水槽を塩ビケースで覆う特注の装置を開発した」という。

この結果、例えば赤外光を根に当てると根は1・8倍、茎や葉は1・2倍成長し、緑と青色光ではマグネシウム含有量が1・5倍、ビタミンCが1・4倍多くなった。

小川教授は「根に光を当ててビタミンやミネラルの含有量変化を確認したのは初めて」と評価。論文は園芸科学の国際学術誌に掲載された。

研究機関への就職が決まっている金さんは修士論文用に、根が光を受けて栄養成分が変化する実際のメカニズムを調べている。

野菜のカリウム含有量を計測する光センサー開発や低カリウム野菜の水耕栽培といった腎臓病患者のための技術開発などに実績をもつ小川教授は「世界トップ水準の日本の農業も〝農学栄えて農業滅ぶ〟に直面しつつある。研究はあくまで実の農業、そして消費者にに貢献することが大切」と話している。(八並朋昌)

この記事の関連ニュース