産経新聞社と産経リサーチ&データが募集した「読者が選ぶ昭和の名優―男性部門・女性部門」には2859人の応募がありました。昭和の名作映画、ドラマの主役、名脇役など編集部が選出した男性178人、女性180人のリストの中から各10人をインターネット投票で選んでもらいました。
調査は昨年12月下旬から1月上旬にかけて実施。男性1850人、女性1009人で、年齢別では80代以上142人、70代669人、60代1008人、50代643人、40代266人、30代以下131人でした。あなたの好きな名優は入っていますか。
31―50位
31 天知茂/「黒蜥蜴」「非情のライセンス」シリーズ 234票
32 水谷豊/「傷だらけの天使」「熱中時代」シリーズ 228票
33 大川橋蔵/「銭形平次」「新吾十番勝負」シリーズ 226票
34 志村喬/「生きる」「七人の侍」 224票
35 佐藤浩市/「青春の門」「敦煌」 222票
36 柄本明/「セーラー服と機関銃」「モモ子」シリーズ 214票
37 伊丹十三/「細雪」「家族ゲーム」 206票
38 菅原文太/「仁義なき戦い」シリーズ 「トラック野郎」シリーズ 199票
39 柴田恭兵/「チ・ン・ピ・ラ」「あぶない刑事」シリーズ 196票
40 舘ひろし/「西部警察」シリーズ「あぶない刑事」シリーズ 195票
41 渡瀬恒彦/「仁義なき戦い」シリーズ 「十津川警部」シリーズ 184票
42 芦屋雁之助/「裸の大将放浪記」 182票
43 高橋英樹/「桃太郎侍」「遠山の金さん」 180票
44 芦田伸介/「七人の刑事」「氷点」 179票
45 田宮二郎/「白い巨塔」「華麗なる一族」 169票
46 里見浩太朗/「大江戸捜査網」「水戸黄門」 165票
47 丹波哲郎/「砂の器」「キイハンター」 160票
48 津川雅彦/「マルサの女「ひとひらの雪」 158票
49 小林薫/「峠の群像」「恋文」 155票
50 風間杜夫/「蒲田行進曲」「スチュワーデス物語」 151票
11―30位
11 松田優作/「人間の証明」「探偵物語」 389票
12 役所広司/「なっちゃんの写真館」「遠野物語」 385票
13 北大路欣也/「徳川家康」「八甲田山」 384票
14 加藤剛/「風と雲と虹と」「新・喜びも悲しみも幾歳月」 382票
15 藤田まこと/「てなもんや三度笠」「必殺」シリーズ 371票
16 真田広之/「里見八犬伝」「麻雀放浪記」 358票
17 加山雄三/「椿三十郎」「若大将」シリーズ 336票
18 渡哲也/「やくざの墓場 くちなしの花」「西部警察」シリーズ 318票
19 宇津井健/「新幹線大爆破」「赤い」シリーズ 315票
20 大滝秀治/「不毛地帯」「あにいもうと」 301票
21 宇野重吉/「わが生涯のかがやける日」「愛妻物語」 299票
22 市川雷蔵(八代目)/「炎上」「眠狂四郎」シリーズ 291票
23 田中邦衛/「居酒屋兆治」「北の国から」シリーズ 273票
24 三國連太郎/「大いなる旅路」「釣りバカ日誌」シリーズ 270票
24 渡辺謙/「瀬戸内少年野球団」「タンポポ」 270票
26 草刈正雄/「復活の日」「汚れた英雄」 263票
27 中井貴一/「ビルマの竪琴」「キネマの天地」 259票
28 森繁久彌/「恍惚の人」「小説吉田学校」 255票
29 仲代達矢/「影武者」「鬼龍院花子の生涯」 252票
30 笠智衆/東京物語」「晩春」 245票
1―10位
1 渥美清/「男はつらいよシリーズ」「八つ墓村」「あいつばかりが何故もてる」「喜劇急行列車」 1072票
2 高倉健/「日本俠客伝」「網走番外地」シリーズ 「幸福の黄色いハンカチ」「南極物語」「駅 STATION」956票
3 石原裕次郎/「太陽の季節」「嵐を呼ぶ男」「太陽にほえろ!」「西部警察」シリーズ 925票
4 緒形拳/「復讐するは我にあり」「楢山節考」 808票
5 西田敏行/「池中玄太80キロ」「植村直己物語」 631票
6 田村正和/「眠狂四郎」「ニューヨーク恋物語」 484票
7 石坂浩二/「おはん」「金田一耕助」シリーズ 431票
8 三船敏郎 /「羅生門」「七人の侍」「無法松の一生」 430票
9 勝新太郎/「座頭市」シリーズ 「悪名」シリーズ 421票
10 植木等/[無責任]シリーズ 「日本一」シリーズ 391票
1位の渥美さんは昭和3年、東京市下谷区(現・東京都台東区)生まれ。不良少年時代を経て、浅草の軽演劇の世界へ。コメディアンとして初期テレビ時代に活躍し、映画界にも進出を果たしました。テレビドラマの「男はつらいよ」に主人公・車寅次郎(寅さん)役で出演したのが43年、40歳のときでした。
翌年に映画化され、49作(特別編含む)にわたる国民的長寿シリーズに。最後の数年は肺がんと闘いながら同シリーズのみに専念し、平成8年8月に68歳で死去。その後、国民栄誉賞を受賞しました。ミステリアスかつ質素な私生活だっと伝えられ、最後まで保たれた「寅さん」のイメージが国民の脳裏に深く刻み込まれました。
2位の高倉さんは昭和30年、東映に第2期ニューフェイスとして入り、翌年に主演デビュー。以後、やくざ役や地方出身の熱血青年などを多数演じました。ストイックなイメージを確立し、当時の全共闘世代が熱く支持するヒーロー像にも重なりました。
52年には「八甲田山」と「幸福の黄色いハンカチ」で第1回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。58年の「南極物語」は日本映画史上空前の大ヒットを記録。そのほか「鉄道員(ぽっぽや)」、ハリウッド大作「ブラック・レイン」なども語り継がれる作品です。出演作は200本を超えました。平成25年に文化勲章を受章。翌26年に悪性リンパ腫のため死去、83歳でした。
3位の石原さんは「タフガイ」「ボス」のニックネームで一時代を築きました。昭和9年、神戸市出身。31年に兄、慎太郎さんの芥川賞受賞作の映画化「太陽の季節」に端役で出演した後、慶応大を中退して日活に入社し、「狂った果実」で主演デビュー。以後の3年間で20本あまりの映画に出演し、大ヒットを連発しました。時代は高度経済成長期の直前。若者たちはタフで優しい石原さんの姿に夢を託しました。
やがて活躍の場はテレビへ。〝石原軍団〟の総帥として「太陽にほえろ!」などの刑事ドラマを手掛け、歌手としては「夜霧よ今夜も有難う」「ブランデーグラス」といった名曲を生みました。昭和62年、がん闘病の果てに52歳の若さで亡くなりました。
4位の緒方さんは昭和12年、東京生まれ。高校卒業後、辰巳柳太郎に師事すべく新国劇に入団し、35年に映画「遠いひとつの道」でデビュー。40年にNHKで放送された大河ドラマ「太閤記」では豊臣秀吉を演じました。平成20年に71歳で没するまで約50年に渡って活躍し、日本アカデミー賞やブルーリボン賞など華々しい受賞歴を誇りました。長男の緒形幹太さん、次男の緒形直人さんはともに俳優です。
5位に選ばれたのは西田敏行さん。昨年10月に突然の訃報が届き、世間は悲しみに包まれました。西田さんは福島県郡山市出身で、15歳の時に俳優を志して上京。親近感のあるユーモラスな風貌と演技で売れっ子となり、テレビドラマや映画で欠かせない存在になりました。歌手としても「もしもピアノが弾けたなら」が大ヒット。平成以降も「釣りバカ日誌」から「アウトレイジ最終章」まで幅広い役柄を演じ切り、芸域の広さを印象付けました。