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都内遺失物 1日1万4千件 全国唯一のセンターに集約 警視庁150年

産経ニュース 2024年9月25日 8時0分

奈良時代に施行された「養老律令」には、拾った落とし物は役所などに送るよう定めた項がある。落とし物を届けるのは古今を問わぬ日本人の美質ともいえるが、近年は増加傾向にあり、警視庁には昨年1年間で約408万7千件が届けられた。警視庁は全国で唯一、遺失物を専門に取り扱う「遺失物センター」を設置し、持ち主にとって大切な落とし物を常時約90万点保管している。

毎日300人来訪

傘、電気製品、スーツーケース…。

JR飯田橋駅近くにある遺失物センター(東京都文京区)には都内で見つかった落とし物が所狭しと保管され、1日平均約300人が引き取りに訪れる。外出の機会が増える連休は落とし物も増えるという。

遺失物センターの歴史は古い。「東京警視庁」が創設された明治7年の翌8年1月に遺失物事務が東京府から移管された。馬車便を利用して各警察署から拾得物を集めて本庁で管理した。昭和16年に現在の場所で遺失物業務を開始した。

警視庁が扱う落とし物は令和元年の約415万2千件が過去最多。JR東日本や東京メトロなど12の鉄道事業者を合わせると1日平均約1万3千件を超える。持ち主が判明せずに一定期間経過すると遺失物センターに移る。コロナ禍の2~3年は約280万件まで激減したが、4年から増加に転じ、5年は過去3番目の多さとなった。

多いのは免許証やマイナンバーカードなどの「証明書類」で、IC乗車券を含む「有価証券類」が続く。近年はワイヤレスイヤホンや小型扇風機、加熱式たばこの普及で「電気製品類」の増加が目立つ。外国人観光客の増加で、スーツケースも増えているという。

結婚指輪なども届けられるといい、センターの神林秀年遺失物総合対策官は「届けられる落とし物は持ち主にとっては思い出の品であり、価値のあるもの。大切に保管して返還したい」と話す。

データで管理

職員らは日付や発見場所、大きさ、記名の有無などによって細かく仕分けしてデータ化する。返還は窓口に来てもらうか、着払いで郵送する。具体的な場所や日時が分からない場合は、膨大な落とし物の中から特徴などを元に探す。落とし物の増加に伴い、職員の負担も増えているという。

コロナ禍の収束で人出が増えたほか、電気製品の小型化などで、落とし物は全国で増加しており、管理業務の効率化や落とし主の利便性向上の動きも進む。警察庁は全国の警察に届いた落とし物を一括で検索できる仕組みを整備し、警視庁も4年から遺失物届をオンラインでも受け付けている。

今年8月には落とし物をいつでも受け取れるロッカーを全国で初めて導入。センター入り口に警視庁のマスコットキャラクター「ピーポくん」が描かれたロッカーを設置した。利用希望者はオンラインで事前に予約し、送られたQRコードと暗証番号を入力すれば扉が開く仕組みだ。

神林対策官は「落とし物の量が非常に増えています。保管にも限界があり、職員の作業も増えている。落とし物をしないよう注意してほしい。なくした場合は遺失物届を出してください」と呼びかけている。

(大渡美咲)

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