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国民スポーツ大会、問われる意義 広域開催模索に施設基準緩和も課題

産経ニュース 2024年9月4日 21時39分

開催地の負担が重いとして、見直し論が浮上している「国民スポーツ大会」(旧国民体育大会、国体)について、主催団体の日本スポーツ協会は4日、開催の在り方を検討する有識者会議の第1回会合を東京都内で開いた。複数の都道府県による広域開催など負担軽減策が焦点となるが、開催意義から見直される事態にもなっている。

「廃止論」に危機感、負担軽減へ

「『廃止』と言われてギクッとした。そのくらい深刻に考えなければならないことだと思う」。協会の遠藤利明会長は4日の会議冒頭、全国知事会長の村井嘉浩宮城県知事が国スポ廃止に言及したことを念頭に、こう漏らした。有識者会議は自治体や競技関係者のほかアスリートや経済人ら計約34人が参加。年度内に結論を出す予定だ。

全国知事会は昨年11月、見直しを提起。4月に廃止に言及した村井氏は遠藤氏との会談を経て「持続可能な大会」を目指すと軌道修正した。昭和21年に始まった旧国体は今年78回目。秋の本大会と冬季大会で計40競技に約2万7000人が参加するが、負担軽減は当初から問題だった。

令和4年開催地の栃木県は施設整備費など総額約829億円を支出。国の補助は5億5千万円だったが、知事会は、8月にまとめた提言で国や協会に手厚い財政措置を求めた。

「皆が楽しめる」を目標に議論百出

会議で焦点となるのはまず広域開催や競技ごとに割り振る分散開催だ。

原則単独開催とされてきたが、過去には福島・宮城・山形3県(昭和27年)、四国4県(同28年)、香川・徳島2県(平成5年)と前例もある。知事会の提言では「人口減少や地方財政の逼迫が進む中、基準を満たす施設を単独の都道府県が整備することは困難だ」と指摘する。

施設基準の緩和や参加人数の削減も課題だ。400人以上が参加するテニスはコート20面、1000人以上のバスケットボールはコート10面が基準。基準で「約3万人を収容できる」とされる開・閉会式について、知事会は「大幅な簡素化」を訴える。

隔年開催との意見もあるが、3年間しかない中学生や高校生の参加機会を奪いかねず、知事会は毎年開催を提案。一方で知事会は都道府県の持ち回り開催を維持したが、有識者の中には競技ごとに会場を固定して〝聖地化〟を図るべきだとの意見もある。トップ選手に参加してもらうための魅力向上や経済波及効果の問題もある。協会幹部は「金もうけという発想も必要だ」と語る。

スポーツを通じた戦後復興として始まり、都道府県対抗方式で行われるなど国民の一体感や郷土意識醸成に一定の役割を果たしてきた。会議ではそうした意義を問い直す意見も相次いだ。座長を務める日本商工会議所会頭の小林健氏は「社会も国民も随分変わった。トップ選手だけでなく、みんなが楽しめる大会を目指す点では一致していた」と話した。(市岡豊大)

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