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日本は「外交力」を発揮せよ 戦いたくない米・中の「間を取り持つ国」に 話の肖像画 ジャーナリスト・田原総一朗<5>

産経ニュース 2024年10月5日 10時0分

《日本が、かつて世界に誇った「経済」や「技術力」に陰りが指摘されて久しい。安全保障環境も厳しくなるばかり。周りは「敵」だらけだ。田原さん、いったいどうする!》

僕は、日本の将来に対してまったく楽天的ですよ。

どうやって日本が生き残るのか、だって? その「答え」は必ず見つかる。いや、見つけなきゃいけませんね。

たとえば、「外交」の力です。「パクス・アメリカーナ(アメリカによる平和)」と呼ばれた〝アメリカ一強時代〟が終わり、軍事も経済も弱くなったところへ、中国が台頭してきた。今の東アジアの最大の懸案は中国が台湾へ武力侵攻するか、どうかでしょう。

そうなったとき、アメリカはどうするか? 中国を止めるべく軍隊を送り、同盟国である日本にも「ともに戦ってくれ」と求めてくるかもしれません。だけど、ホンネでは中国とは戦いたくない。中国だって同じ。ロシアのプーチン大統領の失敗(ウクライナ侵攻)を見ていますからね。台湾侵攻はそう簡単なことではないのです。

ここに日本の出番がある、と僕は思う。戦いたくない米・中は「間を取り持ってくれる国」が出てくるのを待っている。「取り持てる」のは、日本しかないじゃないですか。もちろん簡単なことじゃないけれど、それができる政治家が日本にいると思うし、現実にそうした動きがあると聞いてますよ。

《安全保障面では、日米安保を維持しつつ「日本の主体性を発揮すべきである」というのが、田原さんの考えだ》

1980年代、日本経済は絶好調だった。だが、対日貿易赤字が膨らんだアメリカからむちゃな要求を突き付けられ、日本はコテンパンにやられてしまう。そのとき、僕は首相だった中曽根さん(※康弘、1918~2019年、首相在任は昭和57~62年)に聞いたことがある。「なんでアメリカにノーといえないのか?」。中曽根さん曰(いわ)く。「安全保障をアメリカに委ねている以上、ノーとはいえません」って。中曽根さんは憲法改正に踏み込もうとしたけれど、世論に反対の声が強くてできませんでしたね。

では、日米同盟を破棄して、日本が自主防衛をすればいいのか? といえば、そうじゃない。たぶん防衛費のコストは今の3、4倍に跳ね上がるだろうし、日本が自前で核兵器を持つべきだという「核武装論」に行き着いてしまう。僕はもちろん反対ですよ。だからこそ日米同盟は維持しつつ、その枠組みの中で日本が主体性を発揮できる方法を考えればいい。

《安倍晋三内閣(第2次)が平成26年に行った集団的自衛権行使をめぐる憲法解釈の変更はそのひとつだという》

「パクス・アメリカーナ」の終焉(しゅうえん)によって、アメリカは日本に日米同盟でより重い負担を求めてくるようになった。簡単にいえば「片務」から「双務」への移行です。日本が拒否すれば日米同盟の危機を迎えるのは明らかでしょう。安倍さんは(第2次政権中の)国政選挙にすべて勝ち、経済も良く(株価を上昇させた)し、(世論の)環境を整えた上で集団的自衛権の問題に踏み込んだのです。

さらに安倍さんは、「日米地位協定」の改定をやろうとした。これがあると、アメリカは日本国内に自由に基地をつくることができるからです。だけど、日本の官僚が猛反対した。「それに手をつければアメリカは安倍政権を本気でつぶしにきますよ」と…。結局、安倍さんは改定を断念したけれど、僕は今度の政権にぜひやってほしい。主体性を発揮するチャンスだと思います。(聞き手 喜多由浩)

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