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国債の格付けが下がる危険性 ワタミ支援の「奨学金」で悩み 渡邉美樹 経営者目線 

産経ニュース 2025年2月11日 9時0分

本日から夕刊フジの連載を引き継ぎ、産経ニュースで連載を始める。

ニッポン放送の番組で『持続不可能な財政』という本を出版された日本総研の河村小百合主席研究員と対談した。1000兆円を超える借金がありながら、日本がこれまで財政破綻しなかったのは、日銀が金利を抑えつけ、「国債の利払い費」が増えなかったからだと河村さんはいう。仮に、金利が3%になれば、30兆円の利払い費が必要となる。その財源はどうするのか。

日銀は先月の金融政策決定会合で0.5%への利上げを行った。利上げを続けると、「日銀は大きくバランスシートを膨らませ、当座預金につける利子のコストが上がる。買い入れた国債との間では、すでに逆ザヤに陥っていると思われる。これが続くと赤字となり、債務超過となる」と指摘する。日銀が信用を失い、円安に歯止めが効かなくなる可能性もある。しかし日銀が金利を上げなければ、物価だけが上がり、「インフレで(国民に)重い負担がのしかかる」。

八方塞がりだが、解決策は、国の借金を減らし、財政再建に取り組むしかない。経済協力開発機構(OECD)の日本への財政再建の提言案を見ると、毎年消費税率を1%ずつ、20%になるまで上げていくことや、年金受給の適格年齢を70歳まで上げるなどが並ぶ。

しかし、今議論されている「年収103万円の壁を引き上げ」などは、財源の裏付けがなく、財政再建とは真逆だ。国民民主党の玉木さんなどは、経済が成長すれば税収が増えるというが、河村さんはインフレで財政再建はできないという。年金や公務員給与などの歳出も増えるからだ。河村さんはとにかく「収入の範囲で予算を組め」と提言する。どの政党も、票が欲しく、歳出削減や増税を訴えない。来年度予算は30兆円の国債(借金)ありきの予算だ。財政再建する気がない予算を通すことは危険だ。国の借金も「借りたものは返す」という姿勢があたり前だ。その姿勢を崩すと世界から信用を失い、国債の格付けが下がり、一気に日本は追い込まれる可能性もある。

先月、ワタミが支援するカンボジアのスクール・エイド・ジャパン(SAJ)の孤児院に行ってきた。OBを交えて、バーベキューを楽しんだ。しかし、新たな問題に頭を悩ます。それは孤児院のOBが、大学の奨学金を、卒業して就職しても、大半が返済しないことだ。現在学生の子も、留年するから来年も奨学金が欲しい、別の学校に進学したいからそれも援助して欲しいと、お願いが続く。あんなにハングリーだった子が、甘えに慣れる。運営は公益財団で、返済は次の子供たちが進学する原資となる。

人は、一度与えられると、それが当たり前となり、自立しなくなることが怖い。毎月10ドルずつでもいいから返済していく、「心構え」を子供たちに伝えた。日本の財政も全く同じだ。国の借金をどう返すのか、全政治家に返済計画を問いたい。(ワタミ代表取締役会長兼社長CEO・渡邉美樹)

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