健康保険証の新規発行が2日に終了し、マイナンバーカードに保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の本格運用がスタートした。患者の医療情報を共有できるため、医療関係者は医療の質の向上に期待を寄せるが、浸透は道半ばだ。マイナ保険証、その代わりとなる資格確認書、そして、従来型の保険証。今後1年間、3つの保険証が使われることになるため、混乱防止も課題となる。
病院は「マイナ使ってほしい」
横浜市金沢区にある横浜市立大学付属病院ではこの日、正面入り口付近に設置された3台のマイナ保険証の読み取りに使う機器に、外来患者らが数分おきにマイナンバーカードをかざしていた。
マイナ保険証は、外来受付などで手続きがスムーズに行えるほか、患者の同意があれば、過去の診療情報を医師が確認できるなどの利点がある。
同病院医事課の女性職員は「医療の質は上がると思う。マイナ保険証を使ってほしい」と話す。同病院では3年前に機器を4台導入し、現在は21台まで増やしている。
ただ、従来型の健康保険証を利用する患者の方が多く、マイナ保険証の利用率は今年9月時点で11%にとどまっている。
政府は令和4年、従来型の保険証を廃止し、マイナ保険証への一本化を表明したが、他人の情報がひも付けられるなどトラブルが相次いだ。女性職員は「セキュリティーの問題で不安に感じてしまい、マイナ保険証の利用を控えているのかもしれない」と話した。
読み取りでトラブル続発
従来型の保険証も有効期限内なら来年12月1日まで使用可能だ。マイナ保険証を持たない人には期限までに、保険証の代わりになる「資格確認書」が届き、今後1年ほどは3つの保険証が使われることになる。
女性職員は「制度が複雑すぎて、何を使えば正解なのかが分かりづらいので、政府が国民に対して分かりやすい説明をしてほしい」と訴えた。
個人病院にも浸透しているとはいい難い。この日午前、東京都千代田区にある「山根耳鼻咽喉科」に来院した約30人のうち、マイナ保険証の利用者は5人だった。
氏名の漢字が旧字体だった場合に黒い丸印で表示されたり、情報のひも付けができないといった読み取りのトラブルが連日発生しているという。
受付を担当する女性職員は「機器の反応に時間がかかることがある。従来型の保険証の方が受付が早く済むことが多い」と指摘した。(宮崎秀太)