現行の健康保険証の発行が2日から停止された。政府はマイナンバーカードに保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」を基本とする体制への移行を進める。ただ、直近10月の利用率は15%台と低調で、普及には国民の不安払拭や利便性を実感できるような環境整備が必要になる。
従来の健康保険証は有効期限内であれば、来年12月1日までは使うことができる。期限が過ぎてもマイナ保険証に登録していない人には保険証の代わりになる「資格確認書」が交付され、医療機関などで提示すれば、保険診療が受けられる。
林芳正官房長官は2日の記者会見で、マイナ保険証について「国民にメリットを伝えるとともに、未利用者も確実に保険診療が受けられるよう対応する」と語った。
政府が強調するマイナ保険証のメリットの一つは医療情報の共有だ。本人が同意すれば、医師は過去の受診歴や投薬情報などを確認でき、重複投薬の回避など医療の質の向上や効率化が期待できる。また、保険証を発行するコストなど年間100億円前後を削減できるメリットもあるという。
マイナ保険証には従来の保険証になかった顔写真やICチップが入っており、なりすましなどで悪用することも難しくなる。平将明デジタル相は「不正利用される穴をしっかり埋めていきたい」と説明する。
一方、マイナ保険証の利用率は10月で15・67%にとどまる。昨年には他人の情報をひも付けるトラブルが発覚し、国民の不信につながった。従来の保険証と類似する資格確認書が併存することで、マイナ保険証への切り替えが低迷する可能性もある。