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元大阪府警の大卒幹部候補生「みんなと同じ釜の飯、うれしい」 新鋭の海保練習船が那覇に

産経ニュース 2024年10月20日 16時45分

海上保安庁の幹部候補生が乗り込む大型の練習船「いつくしま」が那覇港(那覇市)に初めて寄港し、その内部が20日、一般公開された。緊迫化する日本の周辺海域を取り巻く情勢を踏まえ、海保では体制の拡充が続く。幹部候補生の定員増加に伴う練習船の大型化もその一環だ。大卒の元警察官など多様な経歴を持つ幹部海上保安官の卵たちが、大海原で実習を積んでいる。

いつくしまは今年7月に就役した新鋭船。海保の練習船としては最大の総トン数約5500トンを誇る。実習生の定員は従来の練習船「こじま」より40人多い100人に拡充された。

上下2段のブリッジ(船橋)を備えているのが特徴。上部の操舵室で通常の航行業務を担い、下部の操舵室は実習に用いられる。巡視船と同様に甲板には20ミリ機関砲を装備。全長134メートルの船内には、外国の関係機関との合同訓練やレセプションを開催できる多目的室のほか、来賓を受け入れる特別公室などもある。

第11管区海上保安本部(那覇)警備救難部次長の北村直幸さん(49)は「海上保安能力の強化で巡視船が増えており、海上保安官の養成が急務になっている。練習船の大型化で効率の良い実習ができるようになった」と語る。

政府は令和4年12月、安全保障関連3文書の改定に合わせ、「海上保安能力強化に関する方針」を決定。海保の体制拡充が進められている。幹部職員を養成する海上保安大学校(広島県)では、大卒者対象の「初任科」課程が創設され、幹部になるための新たな道が開かれた。

大卒の幹部候補生も増えている。「子供のころから海上保安官に憧れていた」という初任科研修生4期の大井慎太郎さん(29)もその一人だ。

ただ、大井さんが大学を卒業した7年前当時は大卒者が海上保安大学校に入る道はなく、大阪府警の警察官になったという。その後、大卒者対象の初任科の創設を知り、転職を決意。今は酔い止め薬を服用しながら、いつくしまで研鑽を重ねている。

従来の練習船と異なり、定員が拡充されたいつくしまでは、高卒者と大卒者が一緒に実習を受けられる。高卒の幹部候補生と10歳ほど離れている大井さんは「同期でも年齢が違うので見えない壁のようなものを感じていたが、いつくしまが就役して、みんなと同じ釜の飯を食うことができるようになったことがうれしい」と話す。

那覇港に寄港したいつくしま。西に約400キロ離れた尖閣諸島(沖縄県石垣市)では中国海警船が領海侵入を繰り返し、日本の主権を侵害している。緊迫化する国境の海で、海警船と対峙しているのが海保の巡視船であり、海上保安官たちだ。

もちろん、勤務地はこうした最前線だけではない。日本を取り巻く広大な海で日々、警戒監視や救難活動の任務に当たっている。

日本の海を守る海上保安官になるその日を夢見て、大井さんは「実習はしんどいときもあるが、幹部海上保安官として現場に配属されるよう頑張りたい」と力を込めた。(大竹直樹)

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