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「能登半島地震に負けない」富山県でPRプロジェクト始動 地元漁師も奮闘

産経ニュース 2024年7月29日 12時13分

元日の能登半島地震で被害を受けた富山県が、特産の海産物を使ったすしを通じてブランドイメージの向上を図るPR戦略に乗り出した。地震は「食材の宝庫」ともいわれる富山湾の海底にも変化を及ぼし、漁に影響が出ていたといい、関係者は観光需要の回復に向けて力を注ぐ。

「富山湾の宝石」

6月中旬、早朝の富山湾。射水市の新湊漁港から出航した漁船では「富山湾の宝石」と呼ばれる特産のシロエビ漁の真っ最中だった。この日は大漁。体長5~8センチ、体重1・5~2グラムのピンク色に透き通る姿が美しいシロエビが次々と水揚げされていった。

富山の魅力を紹介することで国内外から人を呼び込むことを目的としたプロジェクト「寿司といえば、富山」の一環として関係者向けに実施されたイベントの一コマだ。

プロジェクトの目的は富山県では今年4月時点の推計人口が99万9476人と昭和23年以来の「100万人割れ」となるなど、人口減少が深刻な課題。こうした少子高齢化は全国的な問題で、若者を中心とした「関係人口」(自分が暮らす地域以外に特定の場所を継続的に訪問する人)を地域活性化の担い手として期待する声も大きい。

今回のイベントを主催した関係者は「シロエビを筆頭とする富山の海産物の魅力を知ってもらい、関係人口の創出につなげたい」と意気込む。

海の幸に舌鼓

立山連峰から富山湾の最深部まで高低差4千メートル以上と、世界でもまれな地形・地質を持ち、多様な魚介類が獲れる漁場が広がる富山。1泊2日で開かれた今回のイベントの初日、参加者はこうした特徴を学んだ後、夕方に氷見市内のすし店へ案内された。

地元産の日本酒がふるまわれ、クロマグロやアジなどの富山湾直送の新鮮なネタが、地元の若手すし職人の手によって次々と目の前で握られていく。参加者からは歓声が上がり「ここでしか味わえない」感覚を全員が共有した。翌日には、希望者が漁船に同乗し、冒頭で紹介したシロエビ漁の様子を見学。富山の魅力を文字通り体感するイベントとなった。

ふるさとの海守る

今回の能登半島地震では、富山湾で「海底地すべり」が起きたとみられ、その影響からか4月の漁解禁当初、シロエビはほとんどみることはできなかった。海底地形の変化により、投げ入れた網が切れてしまうといった被害も発生。漁業関係者らは一時、厳しい状況に追い込まれた。

だが、自身も含め明治期から5代にわたって自前の漁船を持つ「親方漁師」を務めてきた射水市の野口和宏さん(46)は「地震のせいで漁に出なければ、漁場が死んでしまう。海を守らなければという思いがある」と力を込める。

そのシロエビ漁は記録的な不漁をへて現在、徐々にではあるが回復傾向にあるという。県は今後、プロジェクトを通じ「10年の歳月をかけてブランドイメージを醸成していきたい」としている。(宇都木渉)

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