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小中学校でプール廃止拡大 老朽化や教師の負担増で民間施設に委託も 移動など課題浮上

産経ニュース 2024年7月14日 22時11分

小中学校の水泳の授業が変わりつつある。施設の老朽化や教師の負担を考慮し、自前のプールを所有している学校が年を追って減少している。学校外にあるフィットネスクラブなどの民間施設で専門の指導員に授業を委ねる学校が増加。子供の泳力向上が見込める一方で、移動の負担などの新たな課題も浮上している。

「雨や日差しの影響を受けやすい」

東京都葛飾区では令和4年ごろから、区立小の水泳授業を学校プールで行うのを取りやめた。今年度までに区内49の小学校のうち、半数を上回る26校が校外でプール授業を行う。葛飾区教育委員会の江川泰輔学校教育推進担当課長は「残りの23校についても、順次移行を進めたい」と話す。

葛飾区によると、学校プールの廃止が進む背景には大きく2つの要因がある。まずは天候だ。水泳の授業は、梅雨から気温が高まった6~9月に行われる場合が多い。江川課長は「遮るものが何もない学校の屋外プールは、雨や日差しの影響を受けやすい」とする。計画していた授業が思うように進まず、教員は授業を補填する調整作業などに追われ、過重労働にもつながっているという。

改築か新設に約2億円

もう一つは施設の老朽化だ。今月5日、高知市内の小学生が中学校のプールで行われていた水泳授業中に溺れて死亡する事故が起きた。小学校のプールが設備の故障で使用できず、近隣の中学校にある、より深いプールで授業を行ったことが引き金になった。

江川課長は、葛飾区内の各学校のプールは建設からすでに60年以上が経過しているとし、「プールを改築か新設する場合の費用には約2億円は必要」とする。今後も、水泳授業の外部委託などは進むとみられるが、江川課長は「学校外の施設で行うため、移動時の児童の安全確保が必要になった」と新たな負担を指摘した上で、「持続可能でより充実した水泳教育が求められる」と話した。

遊泳施設の管理者の人材育成などを手がける日本プールアメニティ協会専務理事の白木俊郎さんは、「どんな形での実施であろうと、プールの授業だけで泳力をつけるには限界がある。海や川では、ライフジャケットの着用を推奨する」と話している。(塚脇亮太)

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