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秋の古都は「徒歩並み」のノロノロ渋滞 京都市はマイカーの観光駐車場利用を禁止、効果は

産経ニュース 2024年11月4日 15時20分

観光シーズンが本格化する中、訪日客の増加などに伴いオーバーツーリズム(観光公害)対策が課題となっている。有数の観光地である京都市では世界遺産・清水寺(同市東山区)周辺の渋滞対策として、市営観光駐車場での自家用車などの利用を禁止し、観光バスのみの事前予約制に切り替えた。ただ急速に回復する観光需要に対応するには、さらなる対策が必要な上、都市部に集中する観光客を地方に分散することも求められる。

50分のタイムロス

10月下旬、清水寺近くの市清水坂観光駐車場(約50台収容)の入り口にこんなメッセージが掲げられていた。「バス完全予約制」。事情を知らず駐車場に入ろうとし、引き返す車もあった。

例年、紅葉シーズンになると駐車場に向かう五条坂などでは慢性的な渋滞が発生。駐車場を探してウロウロする車もその要因の一つとされる。

国土交通省近畿地方整備局が昨年11月、大量の情報を送受信できる次世代交通システム「ETC2・0」を搭載する車両を対象に清水寺付近での走行データを調査したところ、一部では平均時速が徒歩とほぼ変わらない「5キロ以下」だった。駐車場を探してさまようことで最大50分のタイムロスが起きていたことも明らかになった。

対策後は3分短縮

清水坂観光駐車場を巡り、市は昨年、期間限定で料金を2割値上げしたが、混雑緩和に目立った効果はなかった。次の一手として今年10月10日から約2カ月間、観光バスだけの事前予約制に切り替え、自家用車やタクシーの利用を禁止した。

取り組み開始から約1カ月。市によると、駐車場に着くまでの時間は対策前と比べ、上りで平均約3分短縮された。市の担当者は「地元では『以前に比べて渋滞はましになった』との声がある」と手応えを明かす。

だが混雑は駐車場周辺に限らない。対策後も五条坂では日中、外国人観光客らを乗せたタクシーや乗用車による渋滞が目立つ。関係者は「タクシーなどの台数規制も必要ではないか」と抜本的対策の必要性を指摘する。

火災などへの懸念も

これまで市は観光地へのマイカー流入抑制のため、郊外に車を止め、公共交通機関に乗り換えて来訪してもらう「パークアンドライド」を呼びかけてきた。今月からは近隣の駐車場つき商業施設と連携し、パークアンドライドの利用者は駐車料金を無料にするなどの対策を始めた。

清水坂観光駐車場近くで土産物店を営む大井秀民さん(72)は「駐車できないことを知らずに来る人は多い」とこぼす。恐れているのは火災などの緊急事態だ。これまでにも周辺では渋滞の影響で緊急車両の到着が遅れたことがあるといい、混雑解消は喫緊の課題といえる。(堀口明里、渡辺大樹)

観光スタイルの転換議論を

阿部大輔・龍谷大教授(都市計画)の話

美術館や博物館などの観光施設を事前予約制とし、観光客の流れを整理することは世界的な潮流だ。駐車場を観光バスだけの事前予約制にした今回の取り組みは、混雑回避の点において一定の妥当性があるといえるだろう。

ただ清水寺周辺は昔から道が狭く、自動車交通に有利ではない構造だ。京都市は観光客に対し、大型バスで近傍まで行く従来の観光スタイルからの転換を促し、徒歩や公共交通機関を利用してもらうための議論を深めなければならない。

京都市は人口160万人に対し、年間5千万人以上の観光客を受け入れている。駐車場や宿泊施設の供給能力に見合うように、観光需要を調整することも論点になるだろう。観光は繰り返し訪れてもらうことで成り立つ。混雑で街のイメージが悪化し、再訪につながらなければ本末転倒だ。

一方、観光地を抱える地元にとっては、観光客が増えて生活が向上したことを実感できないと、多数の来訪者を受け入れることは難しい。市内で問題となっているバス運転手の確保や京町家の再生など、市への再投資の動きが活性化すれば、市民も納得できるのではないか。(聞き手 入沢亮輔)

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