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若手警察官採取の指紋がオウム信者と一致 仮谷さん拉致に関与 一連の捜査突破口に 警視庁150年 96/150

産経ニュース 2024年10月23日 7時0分

平成7年2月28日夕、東京都品川区の路上で目黒公証役場の事務長、仮谷清志さん=当時(68)=が数人の男にワゴン車で拉致された。警視庁は捜査1課特殊班を中心とした捜査本部を設置。目撃証言などから犯行に使われたレンタカーのワゴン車を特定し、書類から検出された指紋がオウム真理教信者と合致した。

当時を知る捜査関係者などによると、約半年前の6年8月、千住署の若手警察官が、北千住駅付近で歌手の尾崎豊さんが死亡したのは「他殺だ」とするビラを電柱に貼り付けていた信者の男を軽犯罪法違反の容疑で摘発した際に指紋を採取していたという。

レンタカー車内に残されていた血痕のDNA型が仮谷さんのDNA型と一致したため、警視庁はオウム真理教信者が偽名を使ってレンタカーを借り、仮谷さんを拉致したと断定。逮捕監禁などの容疑でオウム真理教の活動拠点とされた山梨県上九一色(かみくいしき)村(当時)の教団施設などを家宅捜索することを決定し、警視庁がオウム真理教の捜査に踏み切ろうとした。

しかし、捜査攪乱(かくらん)を狙ったオウム真理教は、7年3月20日、警視庁の最寄り駅の霞ケ関駅などを狙った史上最悪のテロ事件、地下鉄サリン事件を引き起こした。

その2日後、警視庁などによる強制捜査が始まり、一連の捜査から事務長を逮捕監禁したとして、元教祖の麻原彰晃(しょうこう)元死刑囚=本名・松本智津夫(ちづお)、死刑執行時(63)=らが逮捕された。

仮谷さんが狙われたのは、教団から脱会しようとした関係者の居場所を聞き出す目的だったとされる。仮谷さんは拉致直後に麻酔薬を投与され続け教団施設内で死亡した。遺体は施設内でマイクロ波加熱装置を組み合わせたドラム缶で焼かれ、遺灰も捨てられたため、死因は分からず、裁判は「殺人罪」ではなく「逮捕監禁致死罪」で審理された。遺族には遺骨すら戻ってこなかった。(前島沙紀)

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