大阪市鶴見区にある「正和堂書店」が「牛乳石鹼(せっけん)共進社」(同市城東区)とのコラボで制作した「赤箱」と「青箱」のブックカバーが、今年も注目を集めている。「本の日」の11月1日に合わせて昨年、他店とタッグを組んで文庫本の購入者に配布したところ、SNS(交流サイト)上で話題となり、売り上げアップにもつながった。今年は全国約590店が取り組みに参加。ペーパーレス社会の到来で街の書店が次々と姿を消す中、アイデア勝負で紙文化の魅力を伝えている。
デザインを担当したのは正和堂書店の小西康裕さん(38)。共進社側のアイデアで、今年は牛乳石鹼の香りを加えたしおりも配る。「それぞれ実際の香料で香りをつけたので、青箱と赤箱の違いも楽しんでほしい」とアピールする。
小西さんは京都精華大で美術を専攻し、家業の書店経営に携わるようになった。だが、電子書籍の登場をはじめとするペーパーレス化の波が押し寄せ、本の売り上げに深刻なダメージをもたらすようになった。
逆風が吹く中、自らの専門を生かす形で、7年ほど前から独自のブックカバーを次々と生み出し、SNSでの発信に力を入れた。その作品の目玉の一つが牛乳石鹼の「赤箱」「青箱」だった。共進社が鶴見区内に工場を置くという縁に加え、地域を盛り上げたいという考えが一致したことでコラボが実現。昨年夏に配布したところ、SNSで「かわいすぎ!」「ほしいです」などと注目され、用意した約千部が夕方までにすべてなくなり、再配布の問い合わせも相次いだ。
反響の大きさに他店も注目。ブームにあやかろうとする書店が続々と現れたため、昨年11月の本の日に全国の書店約320店舗で一斉に配布した。ほとんどの書店で普段の2~4倍を売り上げたという。
今年の参加書店は昨年の約2倍に拡大。企画に加わった各店では300部を準備し、1日から文庫本の購入客に配布している。小西さんは「イベントを通じて新しい本や書店と出合い、読書を身近に感じるきっかけになればありがたい」と話している。(北村博子)