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交番設計に女性視点 「誰もが安心して使える建物を」 警視庁150年

産経ニュース 2024年8月7日 7時0分

多摩の峰々を望み、自然豊かな羽村市で、淡い色のタイルが陽光を反射してきらりと光る。JR羽村駅近くの住宅街にある警視庁福生署の神明台交番が今春、老朽化による改築工事を終え、業務を開始した。改築に携わったのは、入庁4年目の施設課建築係、玉村愛依(めい)さん(26)。建築を通じた治安維持の一翼を担いつつ、広がる女性活躍の場所づくりに自らの視点を生かしている。(橋本愛、写真も)

警察署や交番、公舎の改築などを担う警視庁の建築職を知ったのは、大学の建築学科在籍中に参加した就職説明会だった。留置場や道場など、特殊な設備を持つ警察施設の設計から完成まで一貫して携わり、治安を守るという仕事に魅力を感じた。

これまでに、丸の内署(千代田区)や交番の改築などに先輩職員らとともに参加。中でも神明台交番は、入庁1年目に設計の途中段階から加わり、「図面にあったものが徐々に建ち、初めて携わった建物が完成したときは感慨深かった」。

交番の設計やデザインには、女性ならではの視点も取り入れる。女性勤務員の増加に合わせ、1つしかなかったトイレは男女別に分け、休憩室も増やした。小柄な人でも使いやすいよう、服をかけるフックなどの取り付け位置も調節した。

外装にもこだわりが光る。床や壁の色は担当者で決めることができ、正面には淡い水色と白色のタイルを採用。江戸市中に水を引くために作られた玉川上水の取水堰(せき)を持つ、羽村市の水の豊かさをイメージした。「勤務員や訪ねてくる都民の方など、さまざまな人が使う建物。親しみやすく、誰もが安心して使える場所にしたい」と話す。

道路管理者など関係機関との調整や工事の監督など、業務は多岐にわたり、上司の指導も受けながら経験を積む。今後は一連の仕事を一人でできるようになり、より大きな物件を担当することが目標だ。休日は有名な建築物を見に行ったり、街を散策して目についた交番を撮影するなど、デザインの参考になる素材集めにも余念がない。

令和6年4月時点で、警視庁の条例定員に占める女性警察官の割合は11・4%、行政職員における女性割合は50・8%。いずれも徐々に増加しており、警視庁は7年度末までに女性警察官の割合を12%以上にすることを目指している。「ランドマークになる建物を造り、それが地図に残る」という誇りを胸に、女性活躍をはじめとする時代の変化に合わせた空間づくりに奮闘する。

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