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日ハム移転で札幌ドーム6・5億円大赤字 命名権で収益改善狙うが利用拡大には不透明感 深層リポート

産経ニュース 2024年7月13日 8時0分

北海道の全天候型スタジアム「札幌ドーム」(札幌市)が苦境に立たされている。本拠地として利用していたプロ野球北海道日本ハムファイターズが昨年、北広島市に移転した影響で令和5年度決算は6億5100万円の赤字。経営改善に向けてネーミングライツ(命名権)を売却するなど対策を取りながら収益改善を目指している。

リース料減額を要請

かつては大谷翔平投手やダルビッシュ有投手らがプレーし、にぎわいを見せた札幌ドーム。5年度の事業報告では、イベント利用日数が前年度比26日減の98日。新型コロナ禍で打撃を受けた2年度の99日よりも1日少なく、売上高も開業以降で最も低い12億7100万円となった。

札幌ドームは平成26年度の大型ビジョンの更新、30年度の野球用人工芝の更新で赤字を経験。令和2年度も新型コロナ禍による利用落ち込みで赤字になったが、日ハムがいたことでいずれも翌年には黒字回復していた。撤退前の日ハムとの契約は年間リース代だけで約9億円。球団から買い取って販売するグッズ売り上げなどを含めると総額20億円規模の収入があったとされる。

その利益配分を巡っては、同球団が札幌市にリース料減額などを繰り返し要請していたが、いずれも見送られる状況があった。かねてボールパーク構想があった球団側は本拠地移転を検討。札幌市に隣接する北広島市で、令和4年に新球場を含む「北海道ボールパークFビレッジ」を整備して本拠地を移転すると、札幌ドームで開催されるプロ野球の試合数が激減。収益が急降下する要因になった。

命名権と「新モード」

今年6月に札幌市内で開かれた札幌ドームの定時株主総会後の記者会見。山川広行社長はプロ野球の試合が開催できない状況に「平日にやれたらいいが、やらせてくれない」と率直な思いを語ったという。

日本野球機構(NPB)が定める地域保護権の仕組みでは、各球団本拠地の都道府県(保護地域)で試合を行う場合、球団の許諾を得る必要がある。北海道では日ハムがそれにあたるが、移転したばかりの球団にとっては自前の施設を使わない手はない。

イベント利用の落ち込みを補う手段として札幌ドーム側はネーミングライツと、スタジアム内の巨大な空間を黒幕で仕切る「新モード」をアピールする。

ネーミングライツは「2年契約以上」「年額2億5千万円以上」などが条件で契約金は「値引き可能」。赤字圧縮に向けた期待感は大きく、「複数の企業と慎重に協議中」としているが、広告効果などの課題もあり、合意の見通しは立っていない。

集客も課題だ。国内外で活躍する有名ミュージシャンのライブなど一定の実績はあるが、最大収容人数5万3千人超を埋められるアーティストは限られる。そこで考案されたのが巨大な黒幕で会場内を仕切る「新モード」だ。2万人規模で開催できるもので、これまでに3度ほど採用。今年3月の音楽ライブでは参加者から「観客との近さがいい」などと好評だったという。

日ハム移転に伴い、サッカーをはじめとした高校生のスポーツイベントに力を入れるなど、「地域に親しまれる施設を目指す」と担当者。収益の柱だった日ハムを失った今、新たな収入源をどう生み出すかが問われている。

札幌ドーム 平成13年に札幌市豊平区で開業。札幌市が株式の55%を持つ第3セクター「札幌ドーム」が指定管理者として運営している。日ハム移転による経営悪化を受け、札幌市は更新期を迎えた体育館と大型展示場の市内2施設とともに運営を一体化させる構想を検討中。秋元克広市長は「エリア全体を効率的にマネジメントすることを考えていく」としている。

~記者の独り言~ 札幌ドームにとって日ハムは〝お得意様〟だったはずだが、その取引先の要請に応えられず、本拠地移転を余儀なくされたのは本当に残念。北広島市に誕生した新球場の隆盛ぶりを見ると、その思いは強くなる。これまでの札幌市の対応を非難する声もあるが、反省すべきは反省し、未来に目を向けたい。新たに導入された命名権と新モードは残念ながら不調。根本的な運営手法の見直しが急務だ。札幌市民の一人として共に考えたい。(坂本隆浩)

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