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道後温泉本館5年半ぶりにリニューアル 11日全館再開へ、歴史と快適さ両立

産経ニュース 2024年7月8日 11時44分

130年前の明治時代に改築された松山市の観光名所「道後温泉本館」が11日、保存修理工事を経て5年半ぶりに全館営業を再開する。新たに本館3階に2室の休憩室を整備、市は新デザインの入浴券や周遊チケットも準備しリニューアルを盛り上げる。関係者は「歴史ある建物の魅力を残しながら、より安心・快適に利用できる施設になった」と話す。

1羽のシラサギが温泉で傷を癒やしたことから発見されたという伝説が残る道後温泉の歴史は古く、万葉集や日本書紀などさまざまな文献に登場する。

本館は明治27年、当時の伊佐庭如矢・道後湯之町町長の尽力で、小学校教員の初任給が8円といわれた時代に総工費13万5千円をかけ、木造3階建てに改築。その後、増改築を繰り返しながら現在の形になった。平成6年に公衆浴場で初めて国の重要文化財に指定され、アニメ映画「千と千尋の神隠し」に登場する湯屋の参考デザインの一つにもなったとされる。

所有する市はその文化的価値を保ちながら町のシンボルとして活用しようと31年1月から保存修理工事に着手。部分的に営業を続けながら耐震補強や屋根の葺(ふ)き替え、内装工事などを進めてきた。

新たな2室の休憩室については、既存の個室の利用率が高く、近年増加している海外団体客の需要が見込めることからバックヤードとして使っていた3階のスペースを改修し貸し出すことにしたという。市によると6月の受け付け開始以降、週末を中心に予約は好調という。

市は7月11日のリニューアルオープンに合わせさまざまな取り組みを予定。入浴券は描かれた本館やシラサギを切り抜いて組み立てるとジオラマとして楽しめるデザインに刷新したほか、神の湯にはシャンプー、リンス、ボディーソープを設置、休憩室や脱衣室には冷暖房機器を新設するなどした。

野志克仁市長は定例記者会見で「道後温泉の持つ歴史的な価値や情緒ある雰囲気を受け継ぎながら、利用者の満足度を高めていきたい」と説明。道後温泉周辺の旅館や商店街などでつくる「道後温泉誇れるまちづくり推進協議会」の宮崎光彦会長は「130年前の姿を生かした方法で改修された。これから50年、100年先も松山のシンボルとして引き継いでいきたい」と話した。(前川康二)

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