「緊急告知 SNS型投資・ロマンス詐欺 急増中」
「特殊詐欺 撲滅」
今月、これら2種類の防犯ポスター計400枚が滋賀県警高島署管内(同県高島市内)の交番、金融機関などに貼り出される。デザインしたのは高島署生活安全課に勤務する巡査部長の足立義人さん(34)。大学でデザインを学び、前職はデザイン系。足立さんは「特技を生かしたこの防犯ポスターが1人でも多くの人の目に届いて、犯罪の未然防止につながってほしい」と願っている。
上司から頼まれて
テレビドラマ「あぶない刑事」などの影響で、小学生のころから警察官になるのが夢だった。ただ、高校卒業時に警察官採用試験を受けたが落ち、好きだったデザインを学ぶために成安造形大学(大津市)に進んだ。
卒業後は、京都のブライダル関係の会社に入り、デザインの専門知識を生かしてブライダルビデオの制作などにあたった。
平成28年、結婚を前に帰郷を考え、夢だった警察官の採用試験に再チャレンジした。27歳だった。
翌29年に採用され、大津北署勤務となった。防犯ポスターを初めてデザインしたのは同署だった。
「芸大卒だったよね。ポスターを作ってほしい」
令和3年、当時の上司から頼まれ、「置引」「空き巣」に遭わないよう注意喚起するポスターをデザインした。ポスターは当時、県内全12署に配布された。
4年に高島署に転勤。今年になって、勤務する生活安全課の先輩で少年補導職員の三矢澄香さんから再び防犯ポスターのデザインを依頼された。三矢さんは、大津北署で足立さんがデザインした防犯ポスターを覚えていた。「それまでにない斬新なポスターで、心に響いたのを覚えていた。高島市民のためにも啓発ポスターをデザインしてほしいと頼んだ」と振り返る。
犯罪現場の実情反映
高島署での防犯ポスター第1弾は「自転車盗難撲滅 LOCK DE GUARD」だった。9月に500枚が管内に掲出された。
第2弾の2種類も含め、ポスターはどれもドラマ仕立てになっている。足立さんに心掛けていることを尋ねると、「目を引くこと。同僚の警察官をモデルに使っているが、目を引くように目元を大切にしている。啓発ポスターなので、多くの人に見てもらわないと効果がない」。さらに、「言葉は少なく。伝えたいことはたくさんあるので、言葉も多くなりがちだが、かえって伝わらない」という。
防犯ポスターの評判は上々で、同署の伊吹貴也次長は「捜査で被害者に接し、容疑者摘発の思いも強い。犯罪現場の実情を熟知しているので、的確に防犯ポスターのデザインに反映できている」と評価する。
「SNS(交流サイト)型の詐欺などは増加の一途をたどっている。被害に遭っても、財産を取り戻せないケースが多い。未然防止が大切だ」と力を込める足立さん。「犯罪の被害に遭って悲しむ人を1人でも減らすことができれば、との思いでこれからもデザインしていきたい」(野瀬吉信)