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性別変更で「外観要件」違憲疑いに「診断や申し立て厳格化を」ジェンダー医療研究会代表

産経ニュース 2024年7月10日 17時56分

性器の外観を変える手術をせず、性同一性障害特例法の要件のうち「変更後の性器部分に似た外観を持つ」(外観要件)とする規定を満たさないとされた当事者が戸籍上の性別を変更するよう求めた差し戻し家事審判で、広島高裁は10日、性別変更を認める決定を出した。性別違和を訴える若者の性別移行を進める「ジェンダー肯定医療」に対し、慎重な立場を取る「ジェンダー医療研究会」の加藤祥子共同代表は産経新聞の取材に、性同一性障害を診断する医師の資格や基準を厳格化する必要性を強調した。

手術要件は実質的撤廃に

広島高裁の決定は、性同一性障害の診断の手順などに用いる日本精神神経学会の現在のガイドラインについて、性別適合出術が必要か否かは「患者によって異なるものとされている」と指摘。特例法の規定に従い、現時点でも性別適合手術の実施が常に必要だと解釈するならば、外観要件の規定は「違憲の疑いがあるといわざるを得ない」と断じている。

特例法を巡っては、昨年10月に最高裁で、生殖機能の喪失を要件とした同法の規定(生殖不能要件)も違憲と判断されており、性別変更する上でハードルが低くなった形となる。

加藤氏は、今回の決定によって、「実質的に(外観要件と生殖不能要件を合わせた)『手術要件』が撤廃された形となる」と指摘。「本来、性同一性障害と診断されるべきではない人が性別変更される可能性が高まった」とも強調した。

これを踏まえ、今後は診断や戸籍上の性別変更の申し立てを厳格化する必要があるとも言及した。具体的には①診断書を作成する医師の資格の厳格化②日本精神神経学会のガイドラインの厳格化─の2点を求めた。

①については、「例えば『精神保健指定医』という非常にハードルが高い資格があるが、それと同じくらいの制限を法律によって設けるべきではないか」と言及した。

現在は医師免許さえあれば、性同一性障害の診断書を書くことができる。

加藤氏は「半年で数十例の性別適合手術を経ていない『FTM(女性の体で心が男性)』の戸籍変更を家庭裁判所に申し立てたクリニックの医師は産婦人科医と聞く」と具体例も示した。

女性スペースを守る法律を

加藤氏は「そもそも性別違和の原因として、性同一性障害以外の発達障害やうつ病、統合失調症などの精神疾患に起因するケースもある。その場合は肉体を異性に変化させても症状は改善せず、むしろ精神状態が悪化しかねない。欧米では若者にそのような例が多発し、問題になっている」とした上で、「精神科医として専門的な訓練を受けていない医師では、本来治療すべき別の疾患や障害を見落としてしまい、安易に性同一性障害と診断してしまう可能性が高い」と懸念を示した。

一方、②に関しては、現在、日本精神神経学会のガイドラインが「改訂作業中だと聞く」と述べ、「よりエビデンス(科学的根拠)に基づいた内容にしてほしい。性別変更の根拠とされることを考えれば、診断基準も今まで以上に厳格にされるべきだろう」と訴えた。

欧米では、性別変更を経て法的に女性となった人が、肉体が男性であることを理由にスポーツジムなどの施設の利用を断られたり、制限されたりした際、施設を提訴して利用を認めさせる事例が相次いでいる。

加藤氏は「日本でも同様のことが起こらないかが気がかりだ」とした上で「女性スペースや女子スポーツを保護する法律の制定など何らかの対策が必要だろう」と語った。(奥原慎平)

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