昨年11月、千葉県内で最年少となる19歳のタクシー運転手がデビューした。京成タクシー成田(同県成田市)で働く富里市在住の小椋奈々未さんだ。同社で働く父親の芳幸さん(61)の働きぶりをみて志した。「お客さんに安心して乗ってもらえる運転手になりたい」と意欲をみせる。
「お客さんから『安全運転でいいね』『若いね、頑張って』といわれたときは、うれしかった」
デビューから約2カ月。緊張の連続だったが、小椋さんは利用客の言葉から元気をもらう。
高校卒業後、美容系の仕事に就職したが、昨年9月に京成タクシー成田に転職した。入社後は特例講習を受け、タクシーの運転に必要な「第2種免許」を取得した。その後の社内研修などを経て、プロドライバーとしてハンドルを握るようになった。
日本の玄関口「成田空港」周辺を営業基盤とする同社のタクシー運転手は約240人。平均年齢は57歳で20代は16人しかいない。
親子ほど離れた19歳のホープ誕生の背景には、深刻なタクシー運転手不足解消に向けた第2種免許の取得要件の緩和がある。「21歳以上で普通免許を取得して3年以上」だった取得要件は、令和4年に施行された改正道路交通法で「19歳以上で普通免許を取得して1年以上」に引き下げられた。
小椋さんが転職する契機となった芳幸さんは昨年1月、トラック運転手から同社のタクシー運転手に転職した。小椋さんは「転職後の父は自由な働き方ができ、生き生きとしていた。そんな職場で働きたいと思った」と話す。
もともと運転が好きだったことも後押しした。休日は愛車の軽自動車を運転するという。「私以外の人が運転する助手席に座ると、そわそわしてしまう」
そんな愛娘がデビューし、親子で同じ職場という状況を、芳幸さんは「当初は抵抗があったが、事故やお客さんとのトラブルが心配」と気遣う。
小椋さんは「あまり車内が揺れないよう、ブレーキの使い方を心がけている」と利用者の乗り心地に配慮する。車内での会話も苦手ではない。「いずれはお父さんの売り上げを超えたい」と意識する。
芳幸さんは「互いにライバルだから」と対抗心を燃やす。
今月末で20歳を迎える小椋さん。12日は地元の富里市の成人式に出席した。今後の抱負は「英語を覚え、翻訳アプリを使わずに外国の人と話せるようになりたい」と、同社を通じてコメントを寄せた。(岡田浩明)