米国の共和党、ドナルド・トランプ氏が今月20日に第47代大統領として2度目の大統領就任を果たした。第1次政権(2017~21年)では減税政策や規制緩和などが米国経済を押し上げた面もあったが、「米国第一主義」を掲げる政策は米中貿易摩擦の問題などを引き起こし、他国に与えた影響も大きかった。第2次政権でも中国への追加関税のほか、各国一律10%から20%程度の関税を課すと主張しており、埼玉県内の企業にもその影響が懸念される。
東京商工リサーチは、昨年11月の米国大統領選でトランプ氏が当選したことを受け、12月に県内企業にアンケートを実施した。トランプ氏の就任が「自社の業績にどのような影響があると予想するか」という質問に対し、マイナスの影響がありそうだと回答した企業は32・2%(205社中、64社)だった。プラスに影響しそうだと回答した企業は8・3%(17社)にとどまり、不安を抱えている企業が多いことがわかるが、一方で影響はわからないと回答した企業が37・1%(75社)と最も多く、影響を測りかねている企業が多いこともうかがえる。
また、業績への影響の観点で「注目する政策は何か」という質問では、「関税政策」が51・1%(190社中、97社)と半数以上の企業が関心を示しており、関税の問題は第1次政権でも多方面に影響を与えただけに、今後どのように業績に影響するかを懸念している企業が多いようだ。
次いで、「通貨・為替政策」が48・4(92社)、「ウクライナ情勢を含めたロシアとの関係性」が47・4%(90社)、「台湾有事を含めた中国との関係性」が44・7%(85社)と続き、米国だけでなく、中国、ロシアという大国との関係や為替など、国際経済を含めた影響に関心が寄せられている。
トランプ新政権では改めて「米国第一主義」を掲げ、発足後すぐに約100本の大統領令に署名すると聞かれる。世界経済の行方を左右する米国の第一主義の政策は、他国にマイナスの影響を与えかねない。中長期的には国内の企業にも影響が及ぶと予想され、新大統領の言動、一挙手一投足を睨(にら)んだ戦略的な経営が求められそうだ。(佐々木博司・東京商工リサーチ埼玉支店長)