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モノ・ヒト・タガを捨てた 面会は1分4400円也、友はない 森永卓郎さんが残した言葉 話の肖像画 経済アナリスト・森永卓郎<6>

産経ニュース 2025年2月6日 10時0分

森永さんは1月28日に亡くなられました。令和6年12月の取材をもとに連載します。

《がんで余命宣告を受け、資産の整理とともに取り掛かったのが、モノと人間関係の整理だった》

モノは私が教授を務める独協大の研究室にあった20年分の本や資料ですね。これを全部処分したんです。

ミニカーやおもちゃなど、私の趣味である「ビンボーでおバカだけどビューティフル」なもののコレクションは、私設博物館「B宝館」(埼玉県所沢市)にあります。こちらは処分する気は毛頭ありません。

《実行した人間関係の身辺整理はかなり過激な内容だ。「すべての人間関係を絶とう」と決めたという》

私は子供のころ、海外生活でひどい差別といじめに遭いました。そんな経験もあり、人と群れるのが嫌いです。仲間を作ることは、仲間外れを作ることでもあるからです。ずっと一人で戦ってきました。誰にでも差別なく接してきたという自負がありますが、親しい友人はいないのです。

病気を機に、基本的にプライベートでは誰とも会わないことに決めました。ただ、ギャラを払うという人にだったら会ってもいいと。

今は1分4400円の設定です。つまり私と10分間話したかったら、4万4千円かかります。しかも前払いじゃないとだめです。その代わり、払ってくれるなら、オンラインですが、誰とでも会います。政治家だろうが一般の方だろうが誰でも。

《果たして申し込みはあったのだろうか》

「会いたい」と言ってくる人は結構います。だけど、本当にお金を払う人はあまりいないですね。月に1人くらいかな。

でも、そこまでして私と話したいのだから、よっぽどの内容かというと、そうでもないんですよ。宗教の勧誘だったり、「このサプリを飲めばがんが治る」という内容だったり。

《仕事の上でも余計な遠慮を一切しなくなったという》

タガが完全に外れてしまいましたね。今の時代は、本当のことを言うとすぐ干されてしまうんですよ。

私はもともと誰かに忖度(そんたく)をするのは大嫌いなんです。でも生きていくために、いろいろ言いたいことをこらえてきた。そのタガを3段階に分けて外してきました。

最初は長男の康平が成人した平成17年です。子育ての義務から解放され、ちょっと大胆にものを言うようになりました。

次に私が65歳になった令和4年。年金がもらえるようになったので、もう飢える心配がなくなった(笑)。

そして今回の余命宣告です。全部のタガをとっぱらいました。私にとって、もう怖いものはないんです。

《がんの告知を受けた際、執筆中の「書いてはいけない」(三五館シンシャ)を「どうしても書き上げたい」と思った》

闘病生活の中、旧ジャニーズ事務所への批判や日本航空機123便は実は撃墜事件だったという私の主張について書き連ねました。出版した結果、テレビの情報番組のレギュラーは全部失いましたね。ある番組は「急にリニューアルすることになりまして」ということでしたが、ふたを開けてみたら、私だけがリニューアルされていました。

かなりの仕事を失いましたが、幸い本が好評なので、今は執筆の依頼が次々と舞い込んでいる状態です。悔いはないっていうか、もう最後まで戦って死んでやるっていう感じですね。(聞き手 岡本耕治)

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