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需要高まる「焼きのり」 弁当に贈り物に、おいしさ再発見

産経ニュース 2024年12月15日 7時30分

高級感のあるのり弁やおにぎりの人気が高まり、のりが再び注目されている。のり弁の料理講習会が開かれる一方で、焼きのりの人気も上昇。専門店は、年末年始に家庭で味わうための一枚を買い求める人でにぎわっている。

のり弁を極める

「こだわりののり弁を作ろう」をテーマに10月、キッコーマンが講習会を開いた。

講師は、焼きのり専門店「ぬま田海苔(のり)」(東京都台東区)の4代目当主、沼田晶一朗さんと、料理研究家で「ストウブで米を炊く」(誠文堂新光社)などの著書で知られる、しらいのりこさんだ。

2人が作ったのは、タイプの異なるのり2種類を使ったのり弁。やわらかくてうまみの強いのりをご飯に挟み、青のりが混ざった香り高い青混ぜのりを、ご飯の上にちぎってのせた。

のりのうまみを引き立たせるため、かつお節は敷かず、代わりにのりに「かつお節しょうゆ」を塗った。しょうゆ、みりん、酒を煮立たせ、かつお節でだしを取ったもので、さらに、これを使いレンコンのきんぴらや小松菜のおひたしなどを次々と作ってみせた。

「のり弁をおいしく作るコツは塩味と酸味、甘味のバランスの良いおかずを添えること。ご飯とのりを中心に、日本のお弁当の良さがぎゅっと詰まっています」(しらいさん)

初摘みの有明海産

焼きのり需要が一年のうちで最も高まるのは、年末年始だ。

「ご進物が多いうえに、年越しそばや磯辺餅など、家庭で年末年始はおいしいのりを味わいたい、という方がたくさんいます」

こう話す沼田さんの店は食の専門店が軒を連ねる、かっぱ橋道具街にある。ブティックと見まがうおしゃれな店内には、海をイメージした青いパッケージの焼きのりが並ぶ。

いずれも九州・有明海産の希少な初摘みのり。養殖ノリは晩秋から翌年の春にかけて10回ほど摘採されるが、沼田さんは〝初物〟にこだわる。「有明海産のものは、やわらかくて、うまみ、香りが豊かなのが特長。特に初摘みの新芽はやわらかで、ふわっとした口溶けが魅力です」

通常なら表示は「有明海産」。ここでは「鹿島第一壱〇2」「網田(おうだ)混〇1」など、暗号めいた商品名がついている。漁場・等級を順に並べた名で、鹿島第一(佐賀県)、網田(熊本県)は漁場の名前で、以下は等級を示す。

漁場で異なる風味

漁場ごとに異なるおいしさを味わってほしい-。コーヒーに代表される、農場単位で銘柄化した「シングルオリジン」と同じスタイルで提供している。

「山からミネラル豊富な水が川を伝って海へ流れ込むと筋が入る。その『川筋』に位置する漁場で育つノリは、よりうまみを増す。さらに、同じ漁場の中でも100メートル離れれば味も香りも変わる。それほど繊細なのです」

沼田さんにすすめられるまま、試食用ののりを食べ比べてみた。酸味のあるもの、舌の上でとろりと溶けるもの…。個性は千差万別。和食に限らず、幅広い料理人が足しげく通うのもうなずける。

今年も沼田さんは買い付けのため、現地で行われた入札会に出向いた。先月末の佐賀、福岡は「海水温が高かった影響もあり、全体的に初摘みはかための傾向でした」としたうえで、「パリッとしっかりめの食感が好きな方に。巻きずしなど巻き物に向いています」とすすめている。(榊聡美)

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