埼玉県にある東武伊勢崎線の越谷駅を降りて南に向かって5分ほど歩くと、「朝日屋」と書かれたよもぎ色の暖簾(のれん)が見えてくる。越谷市の特産品である小松菜を使い、市の「第二期こしがや愛されグルメ」に認証された「肉なっぱうどん」が名物だ。
歯応えのあるうどんが多い埼玉県だが、60年前に越谷に移転したこの店のうどん食感は柔らかい。うどん以外にも、だて巻き入りの「五目ラーメン」など昭和の伝統を守る一品を提供している。
テーブルに「越谷産の小松菜を使ったメニュー」というファイルがある。麺はうどんとそばの好きな方を選べる。つけ汁で食べる「つけなっぱうどん」もある。寒さが厳しいので、温かい「肉なっぱうどん」を注文した。
甘味のある汁に柔らかいうどんと豚肉、なっぱのシャキシャキ感がアクセントになっている。素材が口の中で融合してまろやかな味わいを生む。厨房を仕切る2代目店主の岡田博義さん(62)は、「豚肉となっぱをごま油で炒めている」。それが、まろやかさの秘訣だろうか。
肉柔らか、なっぱがたくさん
「肉なっぱうどん」が誕生したのは、岡田さんが所属していた埼玉県麺類業生活衛生組合の活動が活発だったころに開催したメニューコンテストがきっかけ。
上位5組に入ったメニューを「会員の皆さんで作っていきましょう、みたいな感じになった」(岡田さん)と、平成22年ごろにメニューに取り入れた。温かいうどんの汁は甘めの味、つけうどんの汁は辛めの味、と2種類の汁を使いわけている。
客層は若い人から年配者まで幅広く、記者が訪れた日に来店していた97歳の女性に肉なっぱうどんの感想を尋ねると、「お肉も柔らかいし、なっぱがたくさん入っている」と満足な様子だった。
元々は食堂だったことから、もつ煮込みなどの単品もあってメニューは多彩。中華系の麺類とカレーライスは、鶏ガラと豚ガラを煮込んだスープから作ると聞き、五目ラーメンとカレーライスを注文した。タンメンの汁のようにすっきりとした味わいの汁は全部飲み干せてしまう。カレーライスは、昭和を思い出す懐かしい味だった。
夏には、季節限定メニューとして、ヨーロッパ野菜のフィレンツェナスを使ったメニューが登場する。岡田さんの新たな創作メニューが楽しみだ。(昌林龍一)
◇
■「そば・うどん 朝日屋」
住所:埼玉県越谷市東柳田町4−13
電話:048・962・3901
◇
■観光メモ越谷市とオーストラリアのキャンベルタウン市との姉妹都市交流10周年を記念し造られた「キャンベルタウン野鳥の森」(同市大吉272の1)。バードケージでは、キャンベルタウン市から寄贈されたオウム類のキバタン、クルマサカオウム、オカメインコに出会える。アカクビワラビーや鳥のエミューもいる。午前9時~午後4時。月曜定休。高校生以上100円。【問】事務所(048・979・0100)。