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東京・江東区にシカ? 都心に出没「アーバンアニマル」民家侵入、人を襲う被害も

産経ニュース 2024年8月3日 18時53分

5月末、東京都江東区で野生のシカが目撃された。4年前には足立区でシカが捕獲されるなど都市部に現れる野生動物は近年少なくない。専門家は「食べ物を探してテリトリーを広げている」と分析。人の生活圏と重なることで農作物を荒らしたり、民家に侵入したりといった被害も報告されており、都市環境に適応した「アーバンアニマル(都市動物)」は見過ごせない問題となっている。

都内に出没するシカ

5月23日午前3時ごろ、江東区新砂の交差点で、シカとみられる動物が目撃された。同日の午前10時ごろには砂町水再生センターに入っていくなど複数の目撃情報があったが、その後は見つかっていない。

シカは令和2年6月2日に足立区でも目撃され、区と千住署などが捕獲。病原菌を保有している可能性があるため引き取り先はなかなか見つからず、最終的に千葉県市原市の動物リゾート施設「市原ぞうの国」に引き取られた。

都によると、府中市の多摩川沿いなどでは4月以降、10件程度のシカの目撃例が寄せられている。都などはシカに遭遇した場合には、近づかない▽写真や動画を撮りに行かない▽大声を出さない▽驚かすような動きをしない▽食べ物を見せない▽エサを与えない-などと呼びかけている。

人慣れする野生動物

都市部に現れる野生動物はシカだけではない。ハクビシンやアライグマ、タヌキなどは各地に定着。民家に侵入して金魚やネコなどのペットを襲ったり、糞尿で汚したりする可能性もあるほか、人を襲うといった被害も確認されている。

世田谷区では、空き家にアーバンアニマルが住み着く事例が確認されている。閑静な住宅街の中にはブロック塀に穴が開き、植物が伸び放題で外壁が壊れるなどした空き家が数軒あり、住民によるとハクビシンやタヌキを見かけるという。70代の女性は「人と目が合っても逃げない。人慣れしている」と語る。最近引っ越してきたという20代男性は、夕方から夜にかけて、1カ月で2、3回ほど目撃したという。

同区によると3年前から糞や物音などの報告が6件ある。区はアライグマなどの特徴をホームページで公開しているほか、専門業者に依頼し、わなを設置するなどの対応をしている。

昭島市では今年に入り、同じ個体とみられるサルが目撃された。都などには、多摩地区の森林に生息するツキノワグマを民家近くで目撃したという情報も一定数ある。

見ても近づかないで

野生動物の生態などに詳しい生物行動進化研究センター理事長のパンク町田さんは、都市部での野生動物の目撃例の増加について、「近年の(木の実などの)豊作によって増えた動物が、ここ2年ほどの凶作で食べ物を探してテリトリーを徐々に拡大していく中で、人のいる都市部に現れるようになった」と指摘する。

パンクさんは「人のいる環境に子供のころから慣れた動物は、人の出す音や光に驚かなくなる」とし、目撃した場合は「危険なので近づかず、役所に連絡してほしい」とした。(梅沢直史)

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