寒さが厳しくなるまでの時期、袖がなく、重ね着しやすい上着があると便利だ。中に着るものを変えれば温度調節ができ、厚着になりすぎない。〝トッピングアイテム〟として、新鮮な着こなしがかなう。
気候の変化商機に
「『長い夏』や『暖かい秋』という季節と気温の変化を商機に変えるため、今年から商品展開カレンダーを見直して衣類を販売しています」
こう語るのは、アパレル大手「三陽商会」の広報、藤井淳子さん。「暖かい秋」が始まった9月から11月にかけて、袖なしの上着の型数を昨シーズンの1・7倍に。生産数量も昨年より3割増やし、販売を強化している。
同社の婦人服ブランド「エポカ」のジレ(9万7900円)は、襟や裾などにフリンジ(房飾り)をあしらい、ジャケット代わりに羽織れそうな一着だ。綿やアクリルなどの糸を織り込んだツイード生地で、見た目より軽い。
「合わせる服次第で温度調節がしやすいのが袖なしの上着のいいところ」(藤井さん)。中に厚手のセーターを合わせれば、冬も着回せる。
また、同社のセレクトショップ「ラブレス」オリジナルのブルゾン(4万9500円)は、ボリュームのある袖をファスナーで取り外せば、ベストとして着ることもできる。
エコ素材も存在感
秋冬の装いを華やかにするエコファーを使った上着も、コートよりジレのほうが使い勝手がいい。
オンワード樫山の婦人服ブランド「23区」のジレ(3万9600円)は、フランスのエコファーブランド「エコペル(ECOPEL)」の素材を使用。
毛並みがしなやかで、ふわふわとしたボリューム感があるが、袖がないので、カジュアルな着こなしにも合わせやすい。
「ジレのようなトッピングアイテムがあると、いつものスタイルに変化が生み出せます」と、23区のPR担当、河野ありささん。
「例えばグレーのジレを同系色のワンピースの上に重ねれば、シックな秋の装いも楽しめます」
袖がなくても暖かさにこだわったアイテムもある。ファーストリテイリングの衣料ブランド「ジーユー(GU)」の「ヒートパデッドベスト」は、今年から風が内側に入り込まないように工夫を凝らし、はっ水機能も強化したという。
生地も中わたも、すべてリサイクルポリエステル繊維でできている。裾部分に通したひもを絞れば、丸みを帯びた愛らしいシルエットになり、コーディネートの幅が広がる。
広報担当の橋本佳苗さんによると、「本格的なアウター着用前の防寒着として好評だ」という。(竹中文)