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日本海の荒波が作り出した自然の造形美 奇岩、岩礁が11キロ続く 新潟・笹川流れ  味・旅・遊

産経ニュース 2024年8月25日 10時0分

日本海の荒波に浸食されてできた奇岩、岩礁、洞窟が約11キロにわたり続く新潟県村上市の「笹川流れ」。日本屈指の透明度を誇る海と迫力ある岩々のコントラストは、国指定の名勝・天然記念物にもなっている。また、日本海に沈む夕日は幻想的で、訪れてほしい観光スポットの一つだ。

笹川流れを満喫したい人には遊覧船がお勧め。海岸線に沿って走る国道345号を車で走りながら見る手もあるが、車を止められる場所が少なく、トンネルも多い。何より海上のほうが壮大な景観を一望できる。

遊覧船の発着場は、JR羽越線桑川駅から海岸沿いを歩いて約15分のところにある。広めの無料駐車場もあり、電車でも車でも行きやすい場所にある。乗船料は大人1500円、小学生以下の子供が700円。遊覧時間は40分ほどだ。

遊覧船で壮大な景観

平日の昼過ぎに発着場に行くと、駐車場には愛知、神奈川、埼玉、宮城各県のナンバーを付けた車が止まり、売店や食堂は観光客でにぎわっていた。

港を出た遊覧船は人気スポットを回っていく。メガネのような形をした、笹川流れを代表する奇岩「眼鏡岩」、大波が来ると岩の中央部に開いた空洞から潮が吹き上がる「汐吹(しおふき)岩」、恐竜が水を飲む姿を連想させる「恐竜岩」などを音声ガイド付きで案内してくれる。

遊覧船のもう一つの目玉はカモメの餌やり。100円で餌を購入し、手でつまんで甲板から差し出すと、たくさんのカモメが目の前に寄ってきて、餌を食べていく。船が来ると、餌をもらえることが分かっているのか、人間を怖がる様子はない。甲板には「カモメを捕まえないでください」との貼り紙があった。

銀座の名店も使う塩

笹川流れの清らかな海水は塩づくりに使われ、同市の産業になっている。笹川流れの北端近くにある「笹川流れ塩工房 Salt&Cafe」を訪ねた。

工場兼店舗に入ると、5つの大きな釜があり、笹川流れからポンプでくみ上げた海水を煮詰めていた。海水はいったん水槽にため、不純物を沈殿させてから釜に入れる。灰汁や石灰などの結晶を丁寧に取り除きながら15時間煮詰め、最後に余分なにがり分(塩化マグネシウムなど)を除くと塩ができ上がる。

小林久社長(85)は「手塩にかけないと、いいものはできない」と話す。こうして作られた塩の3分の1は、東京・銀座や神奈川県鎌倉市などの有名飲食店に出荷される。

工場兼店舗の隣にあるカフェで「塩むすびセット」(1千円)を食べた。おにぎりは、地元のコシヒカリと自家製の塩を使ったシンプルなものだが、コメのおいしさと、塩の淡くやさしい風味が口に広がり、幸せな気分にしてくれた。普段口にする塩とは全くの別物で、おかずの塩サケ、冷ややっこ、みそ汁なども絶品だった。

カフェスタッフの佐藤陽子さん(50)に「青い塩ソフトクリームを食べてみて」と勧められ、桑川駅併設の「道の駅 笹川流れ」に向かった。1階のカフェで出されたのはマリンブルーの日本海ソフトクリーム(400円)。交流サイト(SNS)で話題になり、観光客に人気という。

道の駅から南に約20キロのところに日本海を望む瀬波温泉があり、日本海に沈む夕日を見ながら露天風呂につかり帰路についた。

(本田賢一)

笹川流れ 新潟県村上市の浜新保地区(鳥越山)~寒川地区(狐崎)までの海岸線約11キロを指す。日本海東北道村上瀬波温泉インターチェンジから国道345号経由で約50分。鉄道の場合、JR羽越線桑川駅から徒歩約15分で遊覧船乗り場。船での観賞が便利。

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