パリ五輪・パラリンピックがいよいよ開幕します。美食の都と呼ばれるパリでは、ハーブが料理に欠かせません。それだけでなく、煎じて飲んだり、香りを楽しんだりもして、暮らしにハーブが根付いています。現地を訪ね、本場のハーブの活用法を学んできました。
タイムやローズマリーなど西洋ハーブの原産地は地中海沿岸。そのためフランスでは、古くからハーブが暮らしに用いられてきました。パリには植物療法が学べる大学や、「HERBORISTERIE(エルボリステリ)」と呼ばれるハーブ専門薬局があります。エルボリステリには「ダイエット」「アレルギー改善」などの目的に応じ、煎じて飲むハーブティーや、精油などが並びます。
マルシェ(市場)にはローズマリー、タイム、パクチー、スイートバジル、ディルといった新鮮な生のハーブが大きな束で陳列されていました。
だしのように使い、味の決め手に
パリの老舗ホテル「リッツ・パリ」でハーブを使った伝統的なフランス料理作りを習いました。
フランスをはじめヨーロッパでは、ハーブをだしのように使います。ホテルの厨房では早朝から毎日、大量の野菜とハーブを煮込み、野菜ブイヨンを作っています。
ホテルの研修用厨房に丸一日こもり、フランス人シェフから野菜ブイヨンや、ポワソン(魚)のムニエルの作り方を習いました。
野菜ブイヨンは、フェンネルの株元とニンジン、ショウガ、ニンニクを約1時間、鍋で煮詰めて作ります。
魚料理は、たっぷりのバターに、茶葉のように深みのある香りをもつハーブ「タイム」を添えてフライパンで熱し、白身魚に熱を入れました。タイムの香りが加わった溶かしバターをスプーンで繰り返しかけながら、最後に焼き目をつけます。塩コショウなどの味付けは最低限。調理はシンプル。なのに味わいはジューシーで濃厚です。
ドレッシングにも早変わり
ハーブとバターの組み合わせは、格別な風味を料理に添えます。今回は現地で習ったこと、食べたものをもとに考案したオリジナルのハーブバターのレシピと、楽しみかたを紹介します。
現地でよくエスカルゴ(食用カタツムリ)料理に使われる「ブルギニョンバター」をヒントにしました。ニンニクとバターに、ハーブを利かせるのが基本。今回は、甘くさわやかな香りのあるスイートバジルとタイムを使います。
パンに塗るだけでなく、魚のムニエルやステーキに添えたり、スパゲティ料理の仕上げに加えたりと、使い方はさまざまです。
溶かして大量のワインビネガー(酢)を混ぜると、ドレッシングに早変わり。これで野菜がもりもり食べられます。(ハーブコンシェルジュ 小早川愛)
プロフィル
こばやかわ・あい 日本薬科大招聘(しょうへい)講師。ハーブ農場「ポタジェガーデン」の運営にも携わる。