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スマホの使い方相談、大手各社有料に 背景に高齢者ニーズ増大とショップの維持

産経ニュース 2024年10月10日 18時36分

携帯電話大手が今秋、スマートフォンの利用を助ける有料相談サービスを強化し、「料金が高いのでは」と波紋を呼んでいる。今やスマホは生活必需品となり、日々の買い物や行政サービスなどに用途が広がる一方、使いこなせない高齢者は多く、頻繁に携帯ショップに相談に訪れるケースも。70代ではスマホ所有率が8割を超えたという調査もあり、専門家は「使い方がわからず不安を抱える高齢者は多い」と指摘するが、有料化の背景には、携帯各社の事情もからんでいるという。

「以前は無料だった」

兵庫県内の70代の女性は、9月に長年使っていたソフトバンクのスマホが故障。東京に単身赴任中の次男(51)に相談し、新しい機種に交換した。ただ、データ移行を自身で行うのは難しく、携帯ショップに依頼すると3960円。他にフィルム貼りなども頼める月990円の定額契約を選択した次男は「以前はこうしたサービスは無料だったと思う。ショップの売り上げを考えると、多様なサービスプランを作って高齢者にお金を払わせないといけないのか」とため息をついた。

有料相談サービス自体はこれまでも家電量販店などで見られたが、携帯大手がこぞって相談サービス強化に取り組んでいる。

NTTドコモは9月から、スマホの操作方法やアプリ設定に関する相談を店頭でスタッフが受け付ける月額有料サービスを開始。月額550円で月2回利用可能なプランと、月額990円で何度でも利用可能なプランを2種類用意したほか、1回のみの相談も3300円で利用できるようにした。KDDI(au)やソフトバンクも類似したサービスを提供している。

サービス導入の理由についてドコモは「(高齢者がスマホを)うまく使いこなせないことによる経済損失、コミュニケーション機会の損失、災害時の情報伝達不足など、情報格差(デジタル・デバイド)」を「課題」として挙げ、サービス拡充の重要性を強調する。

スマホ所有70代8割、行政サービスも拡大

背景には、スマホを利用する高齢者が増えている状況がある。ドコモの研究機関「モバイル社会研究所」が今年1月に1130人を対象に行った調査によると、60代では91%、70代で83%、80代前半でも62%がスマホを所有していた。

大阪経済大人間科学部の高井逸史教授(リハビリテーション科学)は「使い方の相談ニーズは極めて高い」と分析する。

高井教授は令和2年から、大阪市内で高齢者を対象とした「スマートフォン講座」を実施。新型コロナウイルス禍で人との交流が少なくなりがちな高齢者らが対象で、その後、教える人材を育成するスマホサポーターの養成講座も行っている。

来春からはマイナンバーカード機能が「iPhone(アイフォーン)」に搭載される予定で、行政サービスのスマホ活用も急速に進む。高井教授は「LINE(ライン)を使った防災情報などの発信も広がっている」と指摘。一方で「家族や地域のつながりが薄れていくなか、相談できる人がおらず、不安を抱えたり怖いと感じたりしている高齢者がたくさんいる」と話す。

ショップ存続の思惑も

一方、携帯各社には別の思惑もあるとみられる。スマホ業界に詳しいジャーナリストの石川温(つつむ)氏は「携帯ショップの役割が失われ、存続が立ち行かなくなっている」と説明する。

石川氏は、スマホの高額化などで機種の買い替え頻度が減ったほか、携帯ショップではなくオンラインなどで購入するケースが増加したと指摘。その上で「スマホが普及して利用者側も使い方に慣れてきたことで、ショップの需要が落ちてきた」(石川氏)。店頭での有料相談サービスを強化することで、携帯ショップに存在意義を持たせつつ、新たな収益源にできるという見方を示した。

また石川氏によると、無料で相談できるショップでは、購入の予定や困りごともないのに訪れ、スタッフに話しかける人も一定数存在する。「本当にスマホを買いたい人や困っている人の対応ができない状況もあったため、有料化することでサービスの質の向上も見込めるだろう」と話した。(藤木祥平)

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