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体操・橋本大輝 技より基礎、廃校で磨いた「連覇より目の前の体操」

産経ニュース 2024年7月31日 22時19分

「あいつは連覇なんて考えていない。頭にあるのは目の前の体操を決めることだけだ」。体操男子の橋本大輝(22)を4歳から指導した「佐原ジュニア体操クラブ」(千葉県香取市)代表、山岸信行さん(68)は東京大会の個人総合で頂点に立った教え子がパリ大会に臨む胸中を推し量った。

幼少期からたたき込んできたのは着地をぴたりと止める基礎。基礎が固まるまで技を練習させなかった。体操は難度の高い技が成功すれば加点される一方、着地の失敗など動作が汚いと減点される。山岸さんは「動作が汚い選手が技をできても汚いままだ」と語る。

練習場所は廃校になった小学校の体育館。バスケットコート1個分の面積に所狭しと器材が並ぶこの廃校で、橋本は技の練習を我慢し、基本動作を反復練習した。

小5の時、橋本は県大会で2位となった。優勝した選手が鉄棒で2回宙返りを決めたのが悔しく山岸さんに「(2回宙返りを)練習したい」と懇願した。技の〝解禁〟は、基礎を身につけた中1の頃。技を練習したい気持ちが強くなっていたことも、その後の世界での活躍につながったのかもしれない。「よく我慢できた」。山岸さんは振り返る。

高校からはクラブを離れたが、大会でメダルを取る度に橋本や両親が報告に来る。「体操を普及させたい」。その際に橋本は、この言葉をよく口にした。自らの演技が競技への注目につながることを意識しているようだという。パリでは7月29日の団体で金をつかみ、31日の個人総合に挑戦。「もう後は好きな体操をやるだけだ」。山岸さんは廃校から世界へと羽ばたいた教え子の活躍を見守った。(市岡豊大)

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